茨城の女医が考案した認知症「改善のためにできることリスト」を詳細初公開。薬なしでも認知機能はよくなる!
「強い下半身が強い脳をつくる」
白土:私が薬に対して慎重なのには、もうひとつ理由があります。外来に来られる方のほとんどは「治療といえば薬」と強く思い込んでいるし、ご家族も薬に望みを託して処方を希望する方が多いです。ですが、認知機能が一粒の薬・一本の注射で劇的によくなることは、まずありません。むしろ副作用でみんながつらい思いをすることになります。 薬というのは、認知機能を改善する手段のひとつにすぎないんです。薬よりも生活習慣の改善のほうが良い効果が期待できますし、本人や家族の力だけでできることがいっぱいある。ですが、外来で使える時間はすごく限られていて、私が「伝えたい!」と思っていることをすべてお伝えすることができません。 そこで「認知機能を改善するためにできること」を100個書きだしたリストをつくって、生活習慣の改善に興味を持ってくださった患者さん・ご家族にお渡ししています。今回はそのリストのなかから、私が「特に知っておいてほしい」と思っていることを紹介します。 ■小麦を避ける 食生活の改善は重要ですが、とくに小麦は避けることをおすすめします。小麦のモチモチ感の素となっているタンパク質「グルテン」が脳に炎症を起こし、思考力の低下(ブレインフォグ)やメンタル不調を招くことがわかっています。昼食を菓子パンで済ませるお年寄りが、実は結構いらっしゃるんですが、それは本当に改めていただきたいです。 小麦を摂るのをすっかりやめられればいいのでしょうが、パンやパスタを完全に食卓から追い払うのは、現実には難しいですよね。それでもたとえば、1~2週間とまずは期限を区切って小麦が主のパン・麺類を控えてみて、頭痛や集中力の低下などの自覚症状が改善するか見てみる。あるいは、普段は控えておいて、どうしても食べたいときや会食のときだけ食べる、など、その人に合った“落とし所”を見つけてうまく付き合っていけるといいと思います。 ■とにかくよく歩く よく歩く人ほど脳内でBDNF(脳由来神経栄養因子)がたくさん分泌されることがわかっています。BDNFというのは、脳の神経細胞の維持・修復に力を発揮してくれる物質なんですよ。 だから私は、よく患者さんに「強い下半身が強い脳をつくるんです」とウォーキングをおすすめしています。最低でも「1回30分を週3回」やっていただきたいですが、もちろんやりすぎは禁物です。頑張りすぎる方には「1日8000歩までは健康効果があります。でも、それ以上は、効果は横ばいですよ」とお伝えすることもあります。 絶対に避けたいのは、家に閉じこもることです。認知機能が落ちてきたから……と、外出を控えるお年寄りや、外出を控えさせるご家族もいるのですが、それではかえって加速度的に認知症が悪化します。