茨城の女医が考案した認知症「改善のためにできることリスト」を詳細初公開。薬なしでも認知機能はよくなる!
歯周病とアルツハイマー病の意外なつながり
■歯科検診を受ける 歯周病はアルツハイマー病のリスクを高める可能性があることが知られています。アルツハイマーの原因の1つに「炎症」があるんですが、亡くなった患者の脳を調べると、よく歯周病(つまり歯肉の炎症)の病原菌が検出されるそうです。身体の炎症は、こんなふうにつながり合って波及するんですが、口は比較的かんたんに治療ができます。だから歯と口のお手入れが必要なんです。 大切なのは、歯が痛くなくても定期的に歯科受診してメンテナンスをすることです。「年に何回くらい行けばいいんですか」とお尋ねになる方がいるのですが、そういう方に私は「すぐ行ってみてください」とおすすめしています。行けば歯科医師さんが必要な治療をしてくださるし、次週また来たほうがいいのか、それとも半年後でいいのか、などアドバイスをしてくれます。 とくに認知症と診断された方は、今すぐにでも受診したほうがいいし、家族の方も歯科受診を強くおすすめしてほしいです。歯科の治療って大変じゃないですか。認知症が深くなり、理解力が衰えてしまうと、“必要な治療なのに本人が嫌がるからできない”ということが起こります。本人が「つらい・痛い」と言葉で訴えてくれることもなくなってしまい、発見も遅れます。今日できる治療やメンテナンスが、2年後、3年後できるとは限りません。だからこそ、速やかな歯科受診をおすすめします。 余談ですが、歯がないと転倒リスクも高くなるので、その意味でもメンテナンスは欠かせません。歯があると噛みしめられるから、体幹に力を入れてバランスがとれますよね。歯がなくても、ピッタリした入れ歯を使っていればまだ安心です。ところが歯も入れ歯もないと力を入れにくくなり、バランスにも影響する。だから転びやすくなるんです。 ■薬の見直し(PPI、スタチン、降圧剤の過剰使用) PPI(プロトンポンプ阻害薬)は、要するに胃薬です。スタチンはコレステロールの薬、降圧剤は血圧を下げる薬です。どれも認知機能を悪化させてしまうことがあります。 わかりやすいのが降圧剤です。80代のお年寄りで、上の血圧が100~110しかない人に降圧剤を中止してもらったら、フラついたりボンヤリすることが減って活気が戻ってきたりします。鬱(うつ)っぽい状態が続いている方がスタチンを服用していたので、やめてもらったら、翌月から症状が落ち着いた、というケースも経験したことがあります。 PPI、スタチン、降圧剤は“飲んでないお年寄りはいない”というくらい、よく処方されていますし、3つとも服用している人も結構います。たとえばPPIは、胃潰瘍にはとてもよく効く薬なので、必要なら使ってもいいと思いますが、高齢者にはリスクがある薬です。「処方された薬だから」と漫然と飲み続けたり、症状がなくなったのに「念のため」と口にしたりするのは、やめたほうがいいですね。 東田:興味深いお話をありがとうございました。ほかに認知症の治療で工夫してらっしゃることはありますか。 白土:通常の5分枠だと、情報提供の時間が足りないので、今、YouTubeなどで動画をつくってアップしています。もともとはご家族に、「○○型認知症ってどんな病気ですか」と質問されたときに、「これを見ておいてね」って言える動画があれば、時間が節約できると思ってつくりました。あと、講演会をしたときなど、「家の近くにいい先生がいなのですが」という質問を参加者から受けるので、ご家族に知識をつけてもらえれば、本人やご家族を守れるかなと思いまして。 日々の診療、研究会の運営、「えんがわJAPAN」への投稿、さらにはYouTubeを活用した情報発信、他職種とのコラボレーションなど、精力的に活動を展開する白土医師から、今後も目が離せそうにない。
東田 勉(フリーライター・編集者)