私大医学部なら「学費3,000万円前後」だが…なかには「6年間ずっとタダ」も。全国約80校に紛れた“特殊医学部”
成績優秀なら、各医学部の「特待生制度」を利用する手も
各医学部の医師国家試験合格率は、受験生の志望校選びの指標となっており、この数値が医学部の人気を左右すると言っても過言ではありません。そのため各大学は、「特待生制度」を設けて優秀な学生を集めることにも力を入れています。学費等を免除することで多くの志願者が集まれば、成績優秀な学生の入学率も高まり、将来的には国家試験の合格率アップにもつながるからです。 以下は、各医学部が提示している特待生制度の一例です。 ●国際医療福祉大学「医学部特待奨学生制度」(医学部特待奨学生S/A) 特典:「医学部特待奨学生S」の場合、1年次300万円を給付・入学金150万円を免除、2年次以降は毎年次280万円を給付(6年間で最大1,700万円給付)。これに加えて学生寮の寮費を全額給付。「医学部特待奨学生A」は、1年次250万円を給付・入学金150万円を免除、2年次以降は毎年次230万円を給付(6年間で最大1,400万円給付)。 選考条件:各入試区分において特に成績優秀で人物識見ともに優れる者(医学部特待奨学生Sは一般入試のみで20名。医学部特待奨学生Aは一般入試25名、共通テスト5名、その他の区分で若干名)。 ●北里大学「特別待遇奨学生制度」(第1種/第2種) 特典:(第1種)入学金、授業料、施設設備費および教育充実費の納入免除。免除額は学費全額。/(第2種)入学金および授業料の一部の納入免除。免除額は6年間で19,450,000円。 選考条件:一般入試合格者のなかから上記2区分による特待生を選考(若干名)。 ●慶應義塾大学医学部「医学部人材育成特別事業奨学金」 特典:4年間、年間200万円(総額800万円)を給付。 選考条件:一般入試成績上位者10名程度。
各大学の地域枠や、自治体・医療法人による奨学金も要チェック
2016年度の医学部卒業生から施行された「新専門医制度」によって、医師免許取得後2年間は内科、小児科、精神科など、多数の専門科を巡回して研修を行ったあとに、専攻科を決めるルールになりました。専門ごとの質を担保するために始まったこの制度でしたが、症例数や指導医が多い都内の病院に学生が集まるようになり、地方の医師不足が深刻化する要因の1つとなってしまいました。 都会へと流れていく医師、枯渇する地方医療、この悪循環を打破するために誕生したのが「地域枠入試」です。 地域枠入試は、一般入試とは別枠で合否判定されます。入学が決まれば奨学金が貸与され、卒業後一定期間(おおむね9年から11年)、指定された地域の医療機関に勤務することで貸与金の返済が免除されます。2008年頃から地域枠の募集人数は年々増員されており、2019年度では札幌医科大学が一般入試を含む定員全体の約8割、東北医科薬科大が約5割を地域枠に充てているなど、全国の医学部総定員数の15~18%が地域枠であると推測されます。 加えて、医師不足に悩んだ地方自治体が、独自の奨学金制度を設置しているケースもあります。以下は、地域内の特定の大学に入学する人を対象に、奨学金制度を用意している地方の一覧です。 北海道(札幌医科大など)/秋田県(秋田大)/福島県(福島県立医科大)/埼玉県(埼玉医科大など)/千葉県(千葉大など)/山梨県(山梨大など)/愛知県(愛知医科大など)/奈良県(奈良県立医科大など)/和歌山県(近畿大)/鳥取県(鳥取大など) 以下は、大学指定なしで、奨学金制度を設けている地方自治体です。 岩手県/秋田県(市町村振興枠)/山形県/宮城県/福島県(へき地医療等医師確保修学資金貸与制度)/富山県/岐阜県/静岡県/京都府/鳥取県(一般貸付枠)/島根県/高知県/長崎県/熊本県/宮崎県 また、病院独自で奨学金制度を設けている医療施設もあります。そのひとつが、救急や離島医療に力を入れている医療法人グループ「徳洲会」の奨学金制度です。在学中は毎月15万円が貸与されます。医師資格取得後は、同グループの関連医療施設で貸与期間の3分の2にあたる日数を勤務すれば、貸与金の全額が免除されます。