「大谷翔平もフリーマンも、山本由伸を信じていた」パドレスとの第5戦“先発までの内幕”…「ヨシノブ・ヤマモト」がドジャースの救世主になった日
ドジャースのファンが「ヨシ」を認めた瞬間
山本の覚悟は決まっていた。技術的には、グラブの位置とみられる“癖”を修正したようだ。モヤモヤは吹っ切れていた。 プレーボールの声とともに、頭から飛ばした。第1球から3球連続で96.5マイル(約155キロ)以上の真っ直ぐ。球に気持ちが乗っていた。 ロバーツ監督がベンチから出て、ボールを取りにくる隙を与えなかった。3回1死一、二塁では、ポストシーズン絶好調のフェルナンド・タティス・ジュニアを三ゴロ併殺打に仕留めて雄叫び。4、5回と3人で片付けた。 もし打たれれば、確実に米メディアの批判の的になっていただろう。それでも、気迫の投球で重圧をはねのけた。観客は総立ちとなった。 5回を乗り切り、誰よりも山本を信じていた兄貴分の大谷が、ベンチで嬉しそうに頭を撫でた。山本は少し照れながらも、頬を緩ませた。 チームには山本を送り出すのに葛藤があったはずだ。ロバーツ監督は「彼を信じていた」というが、その言葉を額面通りに受け取るのは少し難しい。 だが、背番号18はその右腕で信頼を勝ち取った。5回2安打無失点。圧巻の投球で、雌雄を決する第5戦勝利の立役者となった。 その試合から2日後、メッツとのリーグ優勝決定シリーズ第1戦の選手紹介でのことだった。 「ヨシノブ・ヤマモト」とコールされると、ファンからこれまでにはない、大きな、大きな歓声が送られた。ドジャースのファンが本心から「ヨシ」を認めた瞬間だった。 山本は、救世主になったのだ。
(「メジャーリーグPRESS」阿部太郎 = 文)
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