惜しくも2位の宇野昌磨GPファイナルの戦いに見えた真4回転時代の限界
フィギュアスケートのグランプリファイナルの男子フリーが8日、名古屋の日本ガイシホールで行われ、SP2位の宇野昌磨(19、トヨタ自動車)は、ジャンプのミスが目立ちながらも、フリーではトップの184.50点をマークした。だが、合計では286.01点で、SPで首位だったネイサン・チェン(18、米国)の286.51点にわずか0.5差届かずに2位に終わった。 宇野は冒頭の4回転ループで転倒すると、続く4回転サルコーは決めたが、後半に成功率の高かった4回転トゥーループを続けてミスした。同一ジャンプの回数制限ルールが気になり、最後に予定していたコンビネーションジャンプは単発の3回転サルコーだけで終わった。実は3回転トゥーループをセカンドジャンプに加えても違反ではなかったのだが、ジャンプのミスでパニックになっていたのか、緊急対応ができなかったという。 「今回は自分の実力を出すことのできる試合にしたいなと思っていたのですが、フリーは練習の方が明らかによかったです。ただトゥーループがダメだっただけで、調整、練習の仕方は間違っていなかった。みなさんは(ミスが出て優勝を逃し)残念という気持ちかもしれないですけど、僕自身は満足しています」 宇野は冷静に自己分析ができていた。 だが、けがの羽生弦結を欠くGPファイナルでは、平昌五輪“前哨戦”として宇野が頂点に立っておかなければならなかった。 宇野はなぜ敗れたのか。 元全日本2位の中庭健介氏は、「4回転トゥーループのミスはスピードがなく足が止まってしまっていた」という。ミスに至った理由は2つ考えられるという。 ひとつ目はプレッシャーという名のメンタル面の影響。 「最終滑走。しかも、地元。プレッシャーは相当なものだったのでしょう。羽生選手という目の前の最大の目標がなく、自分がエースとして迎えるGPファイナルという、いつもと違う状況も宇野選手にとっては、メンタルに影響を与えたのかもしれません。自分が表彰台の真ん中に立つというリアル感に欠けていたのかもしれません」 2つ目は、プログラムの難易度の高さだ。 「今回、宇野選手はフリーで技術点を限界まで追求するようなプログラムを組んでいました。4回転を5本も組み込む構成です。ここまで難易度の高い構成では余裕が生まれず、ミスが起きるリスクが増します」 宇野は今シーズンから挑戦していながらGPシリーズではここまで封印していた4回転サルコーをプログラムに組み入れ、3つ目のトリプルルッツをイーグルからのトリプルアクセルに変え、後半にも4回転3本、コンビネーションジャンプを3本入れた。4回転は、計5本跳ぶ超難易度の高いプログラムである。 中庭氏は、真・4回転時代は、今、新たな問題に突き当たっているのではないか、と考えている。 優勝したチェンは5種類の4回転ジャンプを6本プログラムに入れてきたが、4回転の予定が2回転になるなどのミスを連発し、綺麗に着氷したのは、わずかに2本だけだった。チェンといい、宇野といい、ミスの競演で勝敗が決まるという苦しい戦いになってしまったのである。 「チェンは4回転を6本も入れてきましたが、結果滑りきれずに成功したのは2本だけです。彼らが技術点を追うのは、おそらくですが羽生選手に勝つためには、そうしなければ勝てないと考えているからだと思うのです。複数種類の4回転を追う流れがありましたが、ここにきて難易度の高すぎるプログラムでミスをして全体の流れを壊して得点が伸びないのであれば、4回転は4本だけのプログラムでいいので、より完璧な演技に近づけた方が勝てるという議論も成り立つのです。宇野選手の難易度の高いプログラムも含めて、五輪前に、もう一度、見直す必要があるのではないでしょうか」 宇野の次戦は平昌五輪の代表が決まる21日からの全日本選手権になる。