ブランドは一朝一夕でつくれません、だから絶対にやめないし、これからも続けていきます【エンケイ株式会社代表取締役社長 三浦信氏:TOP interview】
これからNAPACに求めるもの
最後に、ENKEIが加盟しているNAPAC(一般社団法人 日本自動車用品・部品アフターマーケット振興会)に対して、期待していることを伺った。 「弊社のブランディングの話にもありましたように、アフターをやめてはいけないと思っています。ですから、ブランドをガッチリと守ってやってくというところを、業界全体として盛り上げていきたいですね。これは日本だけではなく、世界の市場を相手にして、日本のブランドを売っていくべきだと思います。たまたま私が米国市場の規模をよく分かっているからというのもありますが、あれほど魅力的な市場があるんだから、そこに出ていかない理由はないと思って、現在も進めています。 アメリカ、ヨーロッパだけでなくアジアも含めて、もっと世界を相手に活動するべきだと思います。間違いなく将来性はあると思いますし、商品競争力も日本ブランドは持っています。先日、弊社の寺田が蘇州GTショーに視察に行ったのですが、中国メーカーはまだまだ日本製品、日本ブランドを見てるという報告を受けています。ですからNAPAC加盟各社様が日本だけでなく世界を見て、世界に出ていきましょうということを──単独ではなかなか難しいでしょうから、NAPACでサポートしていく体制を作っていけるといいですね」 * * * 数年前から「デザイン思考」というのが見直されている。おおまかに説明すると、デザインに必要な思考方法と手法を利用してビジネス上の問題を解決していく手段である。アート(美術)を米国の大学で学んだ三浦氏であるだけに、現在の仕事に活かされているのかが気になるところではある。 「とくに大学で学んだアートの制作アプローチが活かされたということは、意識したことがありません。ただ、社内でのすべてのプロジェクトを作り上げていく達成感というのは、やはり美術も同じだと思うんです。絵を描き上げたときの達成感と同じです。物事を積み上げて作っていくプロセスという意味では、絵を描くのもビジネスでも同じじゃないかなと思います。最終的には自分の思い描いてるイメージへと導いていくという……。 その意味ではOEMというのは、短距離走じゃなくて、長距離走なんですね。ずっと走り続けなきゃいけない仕事なんです。こうした事情があるので達成感を得ることは難しいのですが、日々のタスク、プロジェクトを一つ一つ区切っていけば、それぞれに達成感というのは得られると思います」 大学では印象派を中心に学んだという三浦氏。インタビューの1週間前に大阪までモネの展覧会を鑑賞に出かけるほど、現在でも印象派の絵画が好きであるそうだ。印象派といえば、光(自然光)を分解して画布の上に絵筆で再構成するという表現方法。印象派の絵画を鑑賞するには、ある程度の距離を保って、画布の絵の具の反射光を網膜に映す必要がある。つまり、印象派の細かな技法を学ぶには至近距離のミクロの目で、そして作品そのものを味わうには離れてマクロの目で見る必要がある。これは間違いなくビジネスの分野にも応用できる理論であり、三浦氏の言葉の端々には、こうしたミクロとマクロの視点が常にクロスしていたのが印象的なインタビューであった。
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