加藤将が語る下積み時代から最新作「ボボステ」への期待、今後の展望。成長の影には先輩俳優との出会いも
さまざまなミュージカル作品や舞台で活躍する、加藤将。高身長を生かした二枚目の役どころを務めることも多く演劇シーンで引っ張りだこの彼は、舞台化が話題を呼んだ「超ハジケステージ☆ボボボーボ・ボーボボ」での主演も決定し、さらに注目を集めている。 【写真】「超ハジケステージ☆ボボボーボ・ボーボボ」の主演に抜擢された加藤将 そんな彼に、俳優を目指すきっかけとなった出来事から、尊敬する俳優仲間、さらにこれから稽古がはじまる“ボボステ”のことなど、話を聞かせてもらった。 ■テニスのプロ志望から俳優の道へ ――俳優の道へ進みはじめたころを振り返って、今思うことを教えて下さい。 18歳から大阪の演劇を学べる専門学校に2年ほど通って、24歳で上京するまではバイトばかりの毎日でした。東京で行われるオーディションに行く交通費をとにかく稼がなきゃ、と必死でしたね。 身長が186cmあるので、夜行バスだと身体的にキツくて。体調が悪くなってオーディションで全力を出せなかったこともあったので、移動時間は長いけれど値段が安いこだまを選ぶなど節約していました。 専門を卒業した後の3年半は特に苦労していたんです。だからこそ、つかみ取ったお仕事ひとつ一つに対するモチベーションは、誰にも負ける気がしないですね。 ――大阪から東京のオーディションへ行きはじめたときは、どんな心境でしたか? 当時は、関西からオーディションに行くことは殴り込みみたいなものだと思っていました(笑)。そういう熱量やモチベーションは、今もずっと続いています。 ――努力量が人一倍ある加藤さんですが、そういった熱量はどこから生まれているのでしょうか? 中高6年間、ずっとソフトテニスをやっていて、本気でプロになろうと思っていたんです。毎朝4時起きで実家の兵庫から大阪にある学校に2時間かけて通って、ひとりで朝練をするくらいひたすら頑張っていました。 でも高校のときに、ある日突然先生から呼び出されて、「加藤くんごめん、ソフトテニスってプロないねん」って言われて。テニスのプロは硬式だけなんですよね。 かなり落ち込んだんですけど、テニスに本気で向き合ったおかげで、僕はこんなに努力ができるんだと学べたんです。中学のときは本当に下手くそだったんですけど、どうしてもうまくなりたくてソフトテニスが強い高校に行って、努力した結果、高校の部活内で一番いい成績を残せたんですよ。そこで努力は絶対に裏切らないって確信しました。自分でも、努力の天才だと思ってます。 ――ソフトテニスから一転、俳優の道に進んだきっかけは? テニスの道が途絶えて頭が真っ白になっていたときに、ふとテレビを見たら、たまたまドラマが流れていたんです。そこで、俳優の仕事って面白そうだし、人と違うことをやってみたいなとずっと思っていたので、演劇を学べる専門学校に入りました。 でも、演技なんて一度もやったことがなかったから、はじめは全然好きじゃなくて。専門学校に入った当時は、モデルをやりたくなったり、ブレイクダンスの道に行きたくなったりもしました。だんだんと演じる機会が増えて、楽しいと思うようになっていくうちに、いつのまにか今に至るって感じですね。 ――俳優を選んだことに後悔はないですか? 今となると後悔はないですね。役者の仕事が大好きだし天職だと思っていて、もうこれ以外の仕事はできないです。 ――俳優仲間で、尊敬している人はいますか? 城田優くんです。マインドや情熱が本当にすてきな人なんですよ。たとえば、嫌だなって思うことがあったとき、なんで嫌だったのか、その中身や性質まで考えるようになれたのは、優くんと出会っていろいろなことを教えてもらったおかげです。それに、自分のリアルな感情や苦しかった人生経験を、より演技に生かすことができるようになりました。 ■“ボボステ”は攻めたキャスティング ――10月から「超ハジケステージ☆ボボボーボ・ボーボボ」の主演を務めますが、決まった時の心境を教えてください。 「週刊少年ジャンプ」(集英社)でずっと読んでいて、アニメも見ていたので、舞台化おもろいな!っていうのが第一印象でした。しかもコメディーもめっちゃ好きなので、オファーをいただいたときは即答でやります!って言いましたね。 ――SNS上では作品の舞台化が発表された瞬間から、主演が誰かというのも話題でした。納得のキャスティングという声も多かったと思います。 そう言っていただけるとうれしいですね。俳優業を何年もやってきて、僕のキャラクターを知っている人たちからそういった反応があったと思うので、ありがたいかぎりです。 人気というよりも、ぴったりの配役を重視した攻めたキャスティングをしてくれて、役者としてもスタッフを信じられるなと思いました。 ――面白さを突き詰められる環境になりそうですね。 「ボーボボ」って、いい意味で成立する話じゃないので、演出の川尻恵太さんからも「せりふを絶対覚えられないと思う」と言われるくらいで。「せりふが覚えられないうえに、現状、シーンのきっかけが1000個くらいあるよ!」って言葉をかけられて怯えてます(笑)。 原作ものってブレてはいけない筋があるので、難しいところもあると思うんですけど、本番ではマジで楽しんで、ミスがあっても仲間で笑い合って逆におもしろくしようぜって気概を持っています。役者の先輩方にいろいろと助けてもらうこともあるかもしれないけれど、みんなでいいチームが作れたら楽しんでいただける舞台になるかなって。 それこそ、城田優くんからも「ボーボボ頑張れよ」って言われるくらい、俳優仲間には噂が回っていたみたいで(笑)。「また一皮むけたらいいな」って言ってもらえました。 ――これから稽古に入るとのことですが、心配事はありますか? 衣装がやばいんですよ。衣装合わせの時にガンダムみたいになってましたから、肩が(笑)。衣装の肩幅がデカすぎて通路を通れないんですよ。横を向いて通っても反対側の肩が当たりますし。ひとりで袖にハケられないかもしれないことが、今のところ心配ですね。 ■どんな言葉もキャッチアップできる俳優に ――今後はどのような俳優像を描いていますか? これまで舞台を中心にたくさん出演させていただいていたのですが、30代を迎えた今は映像作品にも出たいなと思っています。 たとえば突然時代劇の映像作品のオファーがあったら、時代劇も映像も経験不足で戸惑いそうだなって。できるだけ実力を100%出したいって思うタイプなので、脂が乗った40代になれるよう、30代のうちにできるだけさまざまな経験を積みたいです。 映像芝居と舞台芝居って分けられることもありますけど、根本は一緒だと思っているんです。大きな舞台でも細かい演技をすることもありますしね。 ――こんな技術を習得していきたい、などの展望はありますか? 真矢みきさんの芝居がとてもすてきだなと思っているんです。日本のドラマって目だけでお芝居することが多いけれど、真矢さんは海外のドラマのように身振り手振りの芝居がナチュラルにできるんですよ。画角の中に自然と収まっていて、宝塚でつちかった舞台の技術があるからこそなんだろうなって。 真矢さんのように多くの舞台を経験している俳優さんや、小劇場で多くの経験を積んできた役者さんってすごくうまいんですよ。たとえば、今の50の演技を25に抑えてって言われたら、すぐにできるんです。 こういった演技論って独特で言語化するのは難しい世界なんですよね。この演技における共通言語が発達していないからこそ、演出家や共演者からどんな言葉で伝えられても、自分なりに解釈して、こういうことを言いたいんだなってキャッチできる俳優になりたいと思っています。 ◆取材・文=イワイユウ 撮影=山内洋枝 スタイリスト=藤長祥平 ヘア&メーク=権田政剛