農業共同施設の老朽化深刻 75%が5年で耐用年数に
全国のカントリーエレベーター(CE)や野菜・果実の集出荷施設といった共同利用施設の75%(3753件)が、向こう5年間で耐用年数を迎えることが、JA全中の調査で分かった。法定耐用年数が把握可能な施設が対象で、本年度までに耐用年数を迎える施設数は62%(3093件)に上る。食料の安定供給を支える共同利用施設の更新が急務となっている。 耐用年数が把握可能な共同利用施設は全国に4998件。大半が30年以上前に設置され、耐用年数を超過しても修繕を繰り返し稼働している例が多い。今後29年度までに、1994~2001年度のウルグアイ・ラウンド関連対策などで相次ぎ設立された施設も更新時期を迎える。 施設別に見ると、CE・ライスセンター1625件のうち、更新時期を本年度までに迎える施設が59%で、29年度までに迎える施設は77%に上る。野菜・果実の選果場(1008件)は本年度までが54%、29年度までが66%、集出荷場(2013件)は本年度までが69%、29年度までが79%、共同利用農産物加工施設(352件)は本年度までが54%、29年度までが65%。 施設更新には多額の費用がかかる。工賃や資材価格が高騰する中、「産地だけで費用を賄うことは難しい」(全中)。国による支援が欠かせない一方、産地生産基盤パワーアップ事業などの予算は減少している。 農林中金総合研究所の尾高恵美主席研究員は「共同利用施設は食料の安定供給に不可欠だ。選果や荷造りなどの作業も農家が負担すると、農作業に割ける労働力や時間が減ってしまう」と指摘。「施設集約やJAをまたいだ共同利用も考えるべきで、産地では将来像を持った話し合いが必要になる」と強調する。 (鈴木雄太)
日本農業新聞