「斎藤元彦氏」再選…そのとき兵庫で何が起きていたのか 当初「40人ほどだった聴衆」が投票前日には「身動きが取れないほどの群衆」に
立花孝志氏や高橋洋一氏の影響力
「斎藤さんはSNSを活用し、数人の支持者を数十人、数十人の支持者を数千人、数千人を数万人……と、幾何級数的に増やすことに成功しました。ただし、斎藤さん自身の発信力だけでブームが起きたわけではありません。この点は非常に注意が必要だと思います。兵庫県で“有権者のうねり”が巻き起こり、斎藤さんが再選を果たしたのは、斎藤さんを応援した“インフルエンサー”の影響力も非常に大きかったのです」(同・吉富氏) 毎日新聞(電子版)は11月18日、「兵庫知事選 斎藤元彦氏を支えたユーチューブ『勝手連』の援護射撃」との記事を配信し、興味深い指摘を行った。YouTubeで斎藤氏の公式チャンネルは告示日以降、再生回数は119万回に達した。ところが、「斎藤氏を応援する」著名人の動画は、ご本人とは桁違いの再生回数だったのだ。 《自ら出馬しながらも斎藤氏の応援を表明した政治団体「NHKから国民を守る党」党首で元参院議員の立花孝志氏(57)は100本以上の動画を投稿し、合計視聴数は計1499万回に上った。さらに、これらの切り抜き動画を配信するチャンネルも計1299万回再生された》 《他にも、インターネット番組「虎ノ門ニュース」が554万回、財務省OBで嘉悦大教授の高橋洋一氏も201万回で、注目を集めた。ゲーム配信やガーデニングを主に扱っていたチャンネルが斎藤氏に関して投稿するケースも複数あった》
実は「信任投票」だった知事選
ただし、こうしたSNSの“援護射撃”が、どんな選挙でも常に力を発揮するとは限らない。吉富氏は今回の知事選が「争点がはっきりしない選挙だったことも大きな影響を与えました」と指摘する。 「通常の選挙であれば、候補者のA氏とB氏が公約を戦わせ、議論を積み重ねることで争点が明確化し、有権者は投票先を決定します。ところが今回の兵庫県知事選では、斎藤さんの対立候補である稲村さんはあまり注目されませんでした。理由は『前知事である斎藤候補を信任するか、信任しないか』が実際の争点になってしまったからです。そのためSNSで拡散され続けた『斎藤さんは悪くない』を信じた人は斎藤さんに投票し、信じなかった人は他の候補者に投票するということになりました」 兵庫県の有権者は知事選に際し、「斎藤氏は知事としてマルかバツか」を中心に投票先を考えていた。そのためSNSで斎藤氏を擁護する情報が拡散すると“参考情報”にする有権者が多かったというわけだ。 「新聞社やテレビ局を中心とするオールドメディアに誤報やミスリードが存在するのは事実です。しかし、SNSを中心とするネット上の情報も同じように偏っていたり、正確ではないものが含まれています。特に今回の知事選は百条委員会の調査が終わっていないのに告示されたため、パワハラ問題などで『何が事実か』が分からないまま有権者は投票することになりました」(同・吉富氏)