『silent』手掛けた敏腕P「企画書は見た目が9割」 わかりやすくできないなら企画自体を捨てよう
また、見せる相手に合わせて企画書の見せ方を少しずつ修正することも少なくありません。役者さんに見せる時には、その人の役どころが一番分かりやすくなるように説明を増やしたりします。 「見た目」の次に大事なのは「分かりやすさ」。 当然ですが、どれだけ見た目が良くても、中身が分かりにくい企画書ではダメ。企画書で「見た目」の次に大事なのは「分かりやすさ」です。かと言って、長々と文章で説明するのも逆効果だと思います。僕がドラマや映画の企画書を作る時に目指している分量は、できれば1ページか2ページ、多くても5ページくらいまでです。そして5ページ見たら中身が分かるように、内容を簡潔にまとめることを意識しています。
5ページで表現できないような面白さも世の中にはあるのでしょうが、簡単な説明で伝わらないものは、作品が完成しても結局は伝わらない、と僕は思っています。なので、企画書を作る時には、分かりやすくできないなら企画自体を捨てる、面白い企画書にならないのであれば中身もきっと面白くない、そういう感覚で作っています。 ■AIはエモい企画書を作れるのか? 企画書はラブレター。 ご多分に漏れず、うちの会社でも少し前にChatGPTが話題になったのですが、同僚の中には試しにChatGPTに企画書を作らせた人もいました。その同僚によると「ChatGPTはそれなりにいい企画書を作ってくるけど、エモさがない」とか。エモさがない、というのは、情熱がないとか、この企画を実現したいという“想い“が伝わらないとか、色々ありますが、とにかくエモさがない、と。「こういう気持ちの部分は、やっぱりAIにはできないんだな」とその同僚は納得していました。
AIと張り合うわけではありませんが、僕の企画書にはそういう“想い”はかなり乗っていると自負しています。「絶対にこれをやりたいんです!」とか「必ず当てます!」とか、そういう気持ちで企画書の隅々まで埋め尽くされている。 企画書はラブレターみたいなもので、自分の“想い”を相手に伝える場です。人の“想い”は、企画書を作った人から企画書を見る人へ、ちゃんと伝わっていくものだと信じています。だから、伝わるように書いた方が、絶対にいい。そう思っているから、僕は、AIには企画書作りを任せないし、自分と同じようなエモい企画書はAIには作れないはず! と思っています。
村瀬 健 :テレビプロデューサー