「薬をやめることがゴールではない」埼玉ダルク、依存回復支え20年
覚醒剤や大麻など薬物依存症からの回復を手助けするリハビリテーション施設「埼玉ダルク」が今年、開設20周年を迎えた。最近はリハビリだけでなく、若者の危険ドラッグや市販薬の過剰摂取防止を訴え、学校などで講演する機会も増えている。 【写真】埼玉ダルクの辻本俊之施設長=2024年11月12日午後3時27分、さいたま市浦和区、淺野眞撮影 埼玉ダルクは、さいたま市浦和区にあるカトリック浦和教会内に2004年7月に設立された。さいたま市役所に近い教会が土地を提供してくれ、そこに施設を建てた。開設当初は教会内の施設だけだったが、いまはさいたま市と川口市に入寮施設もある。 薬物依存からの回復に特効薬があるわけではない。開設当初から施設長を務める辻本俊之さん(66)は「まずは、本人が薬物をやめたいと思うところから回復は始まる」という。 回復に向けた一歩を踏み出す場が、原則毎日開かれる「ミーティング」と呼ばれる当事者同士の集まり。なぜ自分は薬物にはまったのかを率直に語り、どうすれば薬を使わずに済むようになるのかを話し合う。ひたすら、このミーティングを繰り返す。 辻本さんは「薬をやめることがゴールではない。自分の人生の問題に正直に向き合えるようになるのが『回復』です」という。 もうひとつ、辻本さんが大切だと考えているのが、仲間の手助けをすることだ。「新しく来た薬物に困っている人に、回復しつつある仲間がアドバイスなど手をさしのべることで、自分の薬物使用も止まり、ともに社会復帰をめざしていく」 懲役刑を受け、出所してくる人の受け皿でもある。刑務所や医療機関、福祉事務所などと連携して、当事者が出所する前に処遇を話し合う。「地域の行政機関とも連携して、出所した人を孤立させないことも大切」 電話や対面による相談事業も長く続けてきた。薬物に困っている家族や当事者から延べ約1万6千件の相談を受けてきた。「若者の危険ドラッグや市販薬使用の相談もあり、時代を反映している」 回復のプログラムを修了する期間はさまざまだ。早い人で1年間。10年間通ったという人もいる。途中でリタイアする人もいる。短期利用を含めて延べ約1300人がダルクを利用した。 辻本さん自身、かつて覚醒剤を使用していた。薬と縁を切ってもう27年になる。「回復したいと願う気持ちがあれば、相談してほしい」と話している。電話相談は048・823・3460(月~金曜日、午前10時~午後4時)。(浅野真)
朝日新聞社