新型エンジンを次々投入、ドゥカティ本社で見たスピード感の源泉「オリジナリティは発明から生まれる」
エンジン設計室は、テスト(46人)、設計(25人)、シミュレーション(6名)の3つの部門に分かれ、計75名のスタッフが常駐。社員でも特殊なバッジを持っていないと入れない部屋だという。新しいエンジンのプロジェクトがスタートしたらそのバイクの目的、コストやボリューム、必要とされるパワーやトルクを元に燃費なども分析。そこからはシミュレーションを繰り返し、エンジンのサイズや軸配置を決めていく。キックオフからここまでで1年~1年半ほどかかるという。
この後、エンジンを制作し試験を繰り返しながら大量生産できるようデザインを変えていく。そして実際にシミュレーションしていた数値と実際の数値を比較。もちろんこういったテストの過程で部品が壊れることもあるが、大切なのは部品が壊れた原因を追求すること。エンジンが完成するまでには約3年を要するという。
その後、マテリアルラボラトリー(素材の研究室)の中にも入り、いろいろと見せてもらったが、そこにはクラックの入ったピストンやバルブ、粉々になったコンロッドなどがあり、その全ての壊れた原因をこの研究室で追求しているという。特殊な蛍光溶剤に部品を漬け特殊なライトを当ててクラックを発見したり、倍率の異なる特殊な顕微鏡で「金属の巣」を確認しているところを見せてもらった。破損の原因はほぼ48時間以内に突き留め、次に進むのだという。
また近年は金属に変わる素材としてポリマーやエラストマーが増えているが、そういった素材も分子レベルで理解してデータ化している。
ドゥカティは軍事施設や大学の研究室、化学物質研究所や警察レベルの機器と人材を揃え開発をスピーディに行っているのである。
◆NEWエンジンを次々と投入するドゥカティ
こうしたドゥカティの開発プロセスは、2012年にアウディの傘下になったことで劇的に進化。エンジンラボラトリーには市販されなかったエンジンがたくさん並んでいたが、この10年間は開発を進めて前に進まなかったエンジンはないという。