なぜソフトバンクはCS初戦で逆転勝利したのか…ロッテが守れなかった2つの短期決戦鉄則
新型コロナ禍のCSは延長10回で打ち切りのルールをレギュラーシーズンに続いて採用している。勝ち数が同じ場合はシーズン優勝のソフトバンクが日本シリーズ出場権を得る。この同点劇で、引き分けでも、ロッテに3連敗しない限り進出できるという余裕がチームに生まれ、完全に流れが変わった。 8回二死満塁から勝負を決めたのは甲斐の内野安打だった。ロッテの“8回の男”沢村の152キロの超高速スプリットに詰まらされた。ボテボテのショートゴロ。だが、工藤監督が「良い打球でした」と言う、その“ボデボデ度”が幸いした。ダッシュしてきた藤岡がランニングスローを試みるが、甲斐は一塁へ頭から滑り込んだ。 「全力で走った。ベンチから先輩たちの声が聞こえたので、何とかしてやろうという気持ちでいった」 お立ち台に呼ばれた甲斐の一打を工藤監督も「執念のヒット。何とかしたいという気持ちがバットに乗り移った」と絶賛した。 池田氏は、リーグ優勝の“裏のMVP”に甲斐を選んでいた。「この日のMVPも甲斐でしょう」と言う。執念の殊勲打だけでなく、そのリード面を評価した。 「今日の千賀のストレートはよかったがフォークがコントロールできず、出来としてはいいとは言えなかった。4度も先頭打者を出塁させていた。だが、粘り強かった。その粘りを演出したのが甲斐のリードだと思う。シーズン中に高谷が故障離脱したことで責任感が芽生え、私は彼が優勝の裏のMVPだと評価しているのだが、この日、ラッキーな決勝打を生み出したのは、甲斐が1本立ちした証拠でしょう」 甲斐自身も、「千賀が粘り強く投げてくれて、それが勝ちにつながった」と7回で8安打を打たれながらも8奪三振3失点と粘った同級生エースに感謝の気持ちを伝えていた。 昨年から続くソフトバンクのポストシーズンの連勝記録は11に伸びた。1975年から76年にかけて阪急が作った最長記録を更新した新記録である。チームの豊富なCS経験と自信が短期決戦の鉄則をロッテに守らせなかったともいえる。8回の甲斐の決勝タイムリー内野安打のお膳立てをしたのは、グラシアル、牧原が選んだ2つの四球。チームが一体となって攻略の糸口をつかもうとする野球には、王者の風格さえ漂う。 今日15日の第2戦の勝利か、引き分けで4年連続の日本シリーズ進出が決まる。最後の9回を3人で締めた森が「明日決める」と宣言すれば、工藤監督は、「一戦必勝。明日も全員で」と語った。 先発は開幕投手の東浜。今季は対ロッテに2勝1敗。防御率、3.41の数字を残している。