なぜソフトバンクはCS初戦で逆転勝利したのか…ロッテが守れなかった2つの短期決戦鉄則
柳田、グラシアルが連打。栗原がしっかりとバントを決めてソフトバンクが一死二、三塁のチャンスを作ると、先にロッテの井口監督が動いた。デスパイネを迎えたところで、美馬をあきらめ東條をマウンドに送ったのである。ロッテの必勝パターンは唐川ーハーマンー沢村ー益田のリレー。唐川でなく東條を選択したのは、リリースの位置が独特でサイドに近い東條の変則スタイルがデスパイネには有効だと考えたのだろう。 デスパイネは崩された。だが、打球の飛んだコースが良かった。ショートの藤岡はセカンドベース付近を抜けそうな打球を好捕。一回転して一塁へ送ったが間に合わなかった。その間に柳田が生還して1点差。さらに一死一、三塁で牧原という場面でロッテベンチは唐川にスイッチした。 その唐川もウイニングショットのカットボールで牧原をセカンドゴロに打ち取った。だが、ここで“まさか”が起きる。セカンドの中村は三塁走者の動きを牽制した上で、一塁走者のデスパイネにタッチ。すぐさま一塁へ送球した。 送球は、それたわけでもなんでもなかったが、三塁走者を気にかけた井上がファーストミットに当てて落球したのだ。一瞬、井上本人が、落としたことにさえ気づかなかった痛恨のボーンヘッドである。一塁のタイミングは微妙だったが、ちゃんと捕球していれば、併殺が成立していた可能性もあった。ロッテは前進守備を敷いていたため、藤岡の二塁カバーは遅れる。中村が二塁併殺ではなくタッチプレーを選択したのは間違いではない。 ハーフウエイに出て打球の行方を見ていたグラシアルは、一度、帰塁しかけたが、一瞬のスキを見逃さなかった。迷わずホームへ突入して“魂”のヘッドスライディング。井上の本塁送球は間に合わなかった。この同点劇を工藤監督が「ナイスランでした」と称え、井口監督がは、「(井上は)急いだんでしょうね。ミスが出たら短期決戦では流れが向こうにいってしまう」と振り返った。 パ・リーグの野球に詳しい評論家の池田親興氏は、「美馬はまだ82球で余力があった。レギュラーシーズンであれば続投だったでしょう。だが、井口監督は、短期決戦ゆえに悔いを残したくないと考えたのだと思うし、デスパイネのヒットはコースヒット。決して継投は失敗ではなかった。ベストの采配だった。ただ、ツイていなかったのだ。だが、拮抗したゲームは先に動いた方が負けのことわざがあるように、ベンチの動きがなんらかの心理的影響をゲームに与え井上の考えられないミスにつながったのかもしれない」という分析をしている。