「ちょっとずれていれば今でも元気に」能登半島地震で妻子失った男性 「祭りもう一度」姫路で修復中みこし
■復旧が遅れている被災地 地元を離れる人も少なくない
1年が経った被災地は、様々な課題を抱えています。 過酷な避難生活で体調を崩すなどして亡くなる「災害関連死」は、276人にのぼり、地震による直接死の数を上回りました。 そして、復旧の遅れ。輪島市門前町黒島町にある升潟さんの自宅は、今も雨漏りする状態が続いています。 【升潟孝之さん】「普通の景色であれば見慣れるということはあるんですけど、この状況は何か立ち止まって見ることが嫌なんですよ。まだ1年経ってこの状態かっていう、変なことばっかり考えてしまうんで」 安定した生活の目途が立たず、地元を離れる人も少なくありません。 【升潟孝之さん】「諦めた人はもうみんな他の地域に移り住んでいくし、でも残りたい人は残るし。人がいなくなることは本当に寂しい」
■「祭りをもう一度」姫路市の宮大工が能登の神輿を無償で修復
かつて北前船の拠点として栄えた黒島町。地元の人が大切にしてたきたのが、江戸時代から続く「黒島天領祭」です。 【若宮八幡神社氏子総代表 林賢一さん】「私らも小さい時から祭りを中心にした生活をしていたんです。ですから皆さん祭りの時期になれば、私らも船に乗っていたんですけど、休みをもらってきて」 神社は被害が大きく祭りに欠かせない神輿(みこし)も大破しました。 「黒島の人に、祭りをもう一度」。 いま、崩れた神輿は、兵庫県姫路市にあります。 【宮大工 福田喜次さん】「全てがもうバラバラだから。昔のつくった棟梁が番付を書いてくれてるけど」 地元の現状を知り、姫路市の宮大工・福田喜次さん(72)が無償での修復を引き受けたのです。 神輿は1744年、280年も前に作られたもので、ひとつひとつの細工に能登の文化が色濃く反映されていて、宮大工歴53年の福田さんでも修復は簡単な作業ではありません。 【宮大工 福田喜次さん】「播州の神輿と違う。こんなところに彫刻があって、本格的な神輿。ふるさとを心配して外へ出ている人が、祭りに帰ってきてくれたらな」 去年の年末には、黒島町の升潟さんが、姫路まで様子を見にきました。 【升潟孝之さん】「すごいですね」 【福田喜次さん】「ここら見にくいけど、一応直したで」 【升潟孝之さん】「これ(屋根)も全部めくられたんでしょ」 【升潟孝之さん】「修理してちゃんとした形でまた黒島に戻ってくるということが、それでまた祭りが再開できればね。なんとか弾みをつけたいですね」 神輿の修復は、工程の半分を終えたところ。8月の祭りでは、たくさんの人が心待ちにしている、元の姿に戻った神輿が見られる予定です。