京大初のプロ野球選手は誕生するか?
京大野球部は18日、関西学生の春季リーグの全日程を4勝9敗、勝ち点1の成績で終えた。この日、南港中央で行われた関大戦には、四死球に失策が絡む自滅パターンで0-4と完敗したが、最終節に行われる立命大―同大のカードで、同大が立命に連敗すれば、京大と同大の両校は勝率で並ぶが、当該の対戦で京大が同大に勝っているため、2000年秋以来、実に14年、27季ぶりに最下位脱出を果たすことになる。 京大を支えたのが、エース、田中英祐(4年、白陵高)の存在だ。新リーグ発足以来、最多の5勝目を狙って先発した前日、17日の関大戦では、10安打、3失点で8回途中に降板。敗戦投手となったが、9三振を奪い、タイムリーは許していない。この日も、連投も辞さぬ気で、スタンバイはしていたが、出番は回ってこなかった。試合後には「気持ちの整理ができていない。自信と課題の見えたシーズンだったが、どちらか、と言うと悔しい部分が多い、勝ち点にこだわると言い続けてきたが、緊迫した場面で思うように力を出せなかった。まだまだ力がない」とコメントを残した。もう取材も慣れたものなのかもしれないが、テレビカメラが何台か並び、記者に囲まれても興奮するでも緊張するでもない。冷静な受け答えから偏差値の高さと明晰さが伝わってくる。 巨人、阪神をはじめとして多くの球団が田中の視察を済ませている。まだ下半身にひ弱さがあって、肉体は未完成だが地肩が強いのだろう。最速147キロをマークしたストレートの威力に加え、カット、ツーシーム、スライダー、フォーク、カーブ、チェンジアップという多彩な変化球のすべてを膝下に集めることのできる“低目マスター”。「制球力もセンスだ」と、主張するスカウトは多いが、“抜ける”という失投がほとんどないため、実戦タイプとして興味を抱いているドラフト候補に挙げている球団があるのも不思議ではない。 しかし、クイック投法は、習得できておらず、走者を出すと極端に球威は落ち、捕手の弱肩という事情もあって足で、かき回されリズムを失う。プロでは、そのあたりの技術習得からスタートすることになるから時間はかかるだろう。田中を見たことのある某スカウトに話を聞いたが同意見だった。「独特の体の使い方をしていて、どちらかというとキレではなくズドーンと重いボールを投げる。上位で消える即戦力投手ではないでしょうが、ドラフトされる可能性はゼロではないと思っています。京大卒の注目度もあります。おそらく体がまだできていないし、プロで最低限必要な技術などが足りないので時間はかかりますね。ピッチャーの陣容に時間的な余裕のあるチームや、将来のフロント候補として期待値も含んで指名する球団はあるのでは?と予想はしますが……」