マヤ文明からテイラー・スウィフトへ、友情ブレスレットの進化史、ライブでファンが交換
友情ブレスレットの誕生
20世紀末になると、新たな友情のシンボルと贈り物のしきたりが生まれる。それは明るい色をした手編みの友情ブレスレットだ。 友情ブレスレットがどう始まったのかはっきりしたことは分かっていないが、中米の手編みブレスレットがルーツかもしれない。 マヤの豊かな織物の伝統から生まれた天然繊維のブレスレットを1960年代、米国の若者たちが身に着けるようになる。カウンターカルチャー運動が盛んだった当時、彼らはナチュラルなファッションを歓迎した。天然素材のアクセサリーは、長い髪、ゆったりとしたブラウス、アースカラー、シンプルなシルエットなどと共に当時の自然主義を表すものだった。 1980年代には、天然繊維のブレスレットは今日でいう友情ブレスレットになっていく。校庭、友達の家でのお泊り会、キャンプファイアーなどさまざまな場面で交換される。X世代やミレニアル世代にとって子ども時代を彩ったおなじみのアイテムだ。 80年代の終わりには、友情ブレスレットは広く浸透した。1989年には当時、ティーンに人気だったコメディードラマ「Saved by the Bell」に、生徒たちが同級生に友情ブレスレットを販売するビジネスを始めるというエピソードが登場したほどだ。
音楽のファンたちの定番アイテムに
1990年代に入るとブレスレットを巡る新たなしきたりがエレクトロニック・ダンス・ミュージック(EDM)シーンから生まれる。色鮮やかなプラスチックのビーズでできた「カンディブレスレット」は、EDMのレイブ(ダンスミュージックイベント)で欠かせないアイテムとなる。レイブの参加者はブレスレットを交換するが、これはEDMへの共通する愛を通して互いを結びつけるといういわば社会的な儀式だ。 スウィフティーズ(テイラー・スウィフトのファン)がコンサートで歌詞の中に登場する友情ブレスレットを交換するのも、EDMのファンがカンディを交換するのと同様のしきたりだ。 カンディ、友情ブレスレット、スウィフティーアクセサリーは、交換する人々にとってそれぞれ異なる意味を持つ。それは特定の音楽ジャンルに対する愛であったり、永遠の友を持つことであったり、あるいは同じ好みを持つファンと想像上のコミュニティーを共有する興奮であったりするだろう。しかし、彼らを突き動かしているのは、広い世界で気の合う人々を見つけたいという人類が誕生した時から持っている共通の衝動だ。
文=Parissa DJangi/訳=三好由美子