マヤ文明からテイラー・スウィフトへ、友情ブレスレットの進化史、ライブでファンが交換
古来、人は友情の証しとして贈り物を交換し、絆を強めてきた
友情は人間の経験の真ん中にあり、人は数千年もの昔からこの特別な関係を大切にしてきた。「友情ブレスレット」はそうした絆の証しとして友人同士が交換するものの1つだ。 ギャラリー:テイラー・スウィフトのアルバムの「Tortured Poets」って何? 写真5点 夏のキャンプで編んだビーズのブレスレットであれ、2つのピースがパズルのようにぴたりとはまるチャームが付いたものであれ、友情ブレスレットはこの数十年間、さまざまな場面で交換されてきた。若者に人気のシンガーソングライター、テイラー・スウィフトのコンサートでは、一緒に見た記念品や友情の証しとしてファン同士がブレスレットを交換するのがお決まりだ。 少なくとも1980年代から米国の子どもたちはこうした色鮮やかな布のアクセサリーを身に着けてきた。ブレスレットの起源はさまざまで、友情を表す唯一のシンボルというわけではない。絆を尊ぶ伝統やシンボルとともに、友情ブレスレットの歴史を紹介しよう。
「友情の証し」の長く多彩な歴史
ほとんどの時代で人は友情の証しとして贈り物を交換し、絆を強めてきた。北欧の古詩を集めた10世紀頃の『エッダ』の一篇である「ハバマール」は、歌でこんな助言をしている。 武器と衣服を贈れば友は互いに喜ぶはずだ おのおのは知るだろう 贈り物を渡し合う友情は長く続く 運命が美しいものであれば 16世紀にはオランダの神学者エラスムスが友人に絵画、書籍、古銭などを贈ったことから、近世の人文主義者の間ではそうしたものを贈り合うことが友情の証しとなった。 18世紀から19世紀のアイルランドでは、伝統工芸品の指輪であるクラダリングが、友情と愛情のシンボルとして勢いを増す。指輪の中央にあるハートは愛情を表し、組み合わせた手は友情を表しているという。円形の指輪は永遠の絆を表現している。 一説によるとクラダリングは、握手をする2本の手をモチーフにしたフェデリングと呼ばれる中世ヨーロッパで流行した結婚指輪からヒントを得たという。これは古代ローマに起源を持つモチーフで、当時「デクストラールム・イウンクティオー」(「右手を結ぶ」という意味)という表現には複数の意味があった。その1つが友情だ。 遠く離れた東アジアにも同様のシンボルがある。それは友達を意味する「友」という漢字だ。これは手と手が重なり合った様子を表している。 欧州ではつないだ手の他、結び目も友情を表すシンボルとなる。14世紀には多くの騎士団で友情の象徴として結び目が使われていた。 18世紀には、友情の証しとして髪の毛を贈り合うようになる。髪の毛は腐りにくく、友情と同じく永遠のものとして捉えられていた。 髪の毛は恋人からの贈り物、あるいは亡くなった人の形見としてもらうものが知られているが、友人同士でも交換していた。米国建国の父の1人で初代大統領のジョージ・ワシントンは、同じく建国の父であるアレクサンダー・ハミルトンなどの親友たちに自分の髪の毛を贈っている。 髪の毛を贈られた人はそれを友人の一部として常に持ち歩けるように、腕輪や首飾りといった装飾品の中に入れた。第2代米国大統領ジョン・アダムスの夫人であるアビゲイル・アダムスも、1805年、友人で米国独立戦争中に活躍した詩人のマーシー・オーティス・ウォーレンと髪の毛を交換すると、指輪とブローチの中に入れている。 19世紀を通して友人同士は「友情ブローチ」を交換した。ブローチには、ビクトリア朝の人々にとって忠誠を象徴したアイビー(キヅタ)があしらわれ、「何ものも私とあなたを引き離せない」という一文が添えられている場合もあった。1913年に登場した友情ブローチのキャッチコピーのように、円形のブローチは「終わりなき友情」を表している。