きっかけは外国人の同僚の一言。言葉の壁なくし「働きづらさ」を解消へ。「やさしい日本語」を多言語表示に加えた理由
「海外出身の同僚から、外国人にとっていかに日本語での手続きが難しいかという話を聞き、仕組みで改善できるはずだと思ったんです」 一人の社員の「気づき」がきっかけとなり、雇用契約や年末調整などをオンラインで行うクラウド人事労務ソフト「SmartHR」に今年、「やさしい日本語」で表示する機能が追加された。 日本で働く外国人が増えている中、SmartHRを使う外国人ユーザーは3万人にも上る。 英語や中国語などの多言語に切り替えて使う既存の機能に、さらに様々な国籍の人にとって使いやすくなるようにと、日本語を勉強中の人にも分かりやすい、やさしい日本語を加えた形だ。
増える外国人ユーザー。どうサポートできる?
誰もが煩わしく難しいと感じてしまう、年末調整や労務関連の各種手続き。 もしそれが母国語でない言語での手続きなら、どれだけ難しいだろうか。 「やさしい日本語」とは、日本語に不慣れな外国人などに対して使われる、シンプルで分かりやすい日本語だ。より簡単な言葉や理解しやすい文法などが用いられる。 日本で暮らし、働く外国人のほとんどは日本語を勉強しているため、基礎的な日本語は理解ができる。そのため、日本各地の自治体や医療機関、外国人向けの採用ページなど様々なシーンで、やさしい日本語の活用が進んでいる。 SmartHRの導入企業を業界別に見ると、宿泊・飲食などのサービス業や卸売・小売業、製造業などが半数以上を占める。それらは、外国人労働者が多く働く業界と一致している。 近年は、特定技能や技能実習生が働く企業による導入も増えているため、外国人へのサポートの需要はさらに増している。 SmartHRでは現在、英語、韓国語、中国語(繁体・簡体)、ベトナム語、ポルトガル語への切り替え機能があるが、近年日本ではミャンマーやネパール出身者も増えており、より多くの言語話者に対応できるよう、やさしい日本語を追加した。
きっかけは外国人の同僚の一言。「仕組みで改善できるはず」
やさしい日本語の切り替え機能導入のきっかけは、同社のアクセシビリティ本部で働く坂巻舞羽さんが、海外出身の同僚から、外国人にとっていかに日本語での手続きが難しいかを聞いていたことだ。やさしい日本語の存在を知った坂巻さんは、「SmartHRにも使えるのでは」とひらめいた。 アクセシビリティ本部では、外国人ユーザーに向けた使いやすさや、障がいがあるユーザーのアクセシビリティの改善などを主に担当している。 多言語チームではメンバーのほとんどが外国出身で、アクセシビリティのチームでは約半数が障がいがあるスタッフだ。 多様な国や地域から集まったメンバーとは、母国語ではない日本語での入社手続きや年末調整の難しさについては、日頃から話していた。 SmartHRでは、年末調整は質問に答えていくだけで完成する独自の仕組みがあるが、それでも質問に使われている言葉が難解で、日本特有の手続きには外国出身者ならではの負担もあった。 「特定の人だけにそのような苦労が増える状態が良くないし、仕組みで改善できることがあるはず。必ず解消していけると考えました」(坂巻さん)