「オリンピックの吸引力はすごい」33歳まで現役を続けた村主章枝 現役生活を通して学んだ「人生を好転させる方法」
村主さん:ロックの曲をクラシックアレンジして踊る機会があり、パンツスタイルの衣装にできないかと考えました。でも、パンススタイルは前例がないので、もし減点されたら困ると、パンツにスカートをつける折衷案で臨みました。また、当時はボーカル入り楽曲の使用が認められていなかったのですが、どうしてもアディエマスの曲で演技したくて。該当曲の声は「楽器として使用されている」「ボーカルではない」と原作者に証明していただき、大会前に提出しました。
── 村主さんの作品へのこだわりは、やはりすごいですね。33歳まで現役を続けましたが、これも前例がありません。 村主さん:アイスダンス以外で、33歳まで現役を続ける選手は聞いたことがありません。オリンピックに魅了され、またあの舞台でいい演技がしたい思いで続けました。オリンピックの吸引力はすごいです。でも、成績だけを求めるのではなく、自分が目指す作品や技術の向上に焦点をあててきたのが、長く選手生活を続ける秘けつともいえます。
■スケートで身につけた「切り替え」は人生にも通じる ── 厳しい勝負の世界で28年間、つらいこともたくさんあったかと思います。 村主さん:ケガをして練習ができなくてつらい、と思ったことはありますが、基本的につらいと思ったことはありません。ケガをしてできないことを悔やんでもしかたがないので、考え方を変えて「できることをやればいい」わけです。だから、そんなに落ち込むことはありませんでした。私は悔しさをバネに頑張れるタイプだったので。
── つらいことはあまりなかった…。もともと前向きなのでしょうか? 村主さん:気持ちの切り替えの早さに、すごく助けられています。これこそ、スケートで培ってきたものです。スケートは時間内に決められた技をやらなければいけません。もし序盤で失敗して、その気持ちを引きずったまま滑り続けると、ガタガタと崩れます。「その次」「その次」と、気持ちを切り替えていく練習を日々行うので、切り替えの早さが徐々に身についたのだと思います。現在、子どもたちを指導していますが、最初はみんなうまく気持ちを切り替えられません。1つ目のジャンプで失敗するとそのまま崩れることも多いのですが、どこに思いを向けなければならないか、集中力をどう取り戻すか、という話をすると、少しずつできるようになります。