急拡大の「スリープテック」気になる進化と現在地、スポーツ界などで導入進むもデータ収集や活用は途上
ONE TAP SPORTS は、2022年から東京都教育委員会が指定する都立高校などの56部活動でもコンディションを管理するアプリとして採用されている。収集するデータの中には睡眠時間なども含まれており、十分な睡眠時間の確保がケガの予防やパフォーマンスの向上につながるといったことがデータで証明されるようになれば、中高生の部活動の指導内容にも影響を与えるようになるかもしれない。 ■睡眠の質を計るデバイスやサービスの評価制度も登場
しかし、これまで「睡眠の質」に関するデータは、専用の施設で脳波計やセンサーを取り付けて、何日もかけて計測を行う必要があるなど収集が難しかった。そのため睡眠研究は、まだまだ十分とは言えず、わかっていないことも多い。 そこで個人的に注目しているのが、「InSomnograf(インソムノグラフ)」というサービスだ。睡眠研究の分野で知られる筑波大学の柳沢正史教授が代表取締役社長を務めるS’UIMINが提供するもので、医療レベルの睡眠検査を在宅で簡単にできるという。
具体的には、額と耳に貼り付ける軽量のセンサーと、スマホよりも小さい脳波測定ウェアラブルデバイスを用いて、脳波と血中酸素ウェルネスを計測。収集したデータをAIで解析し、評価レポートとしてまとめてくれる。 「専門機器を使用する場合と同じく、睡眠中の脳波データを取得するので、心拍計や加速度センサーで睡眠状態を予測するスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスよりも高い精度で睡眠の質が読み取れる」と、同社の担当者は説明する。
普段寝ている環境において、2晩計測するだけで睡眠の質を可視化できるという点が画期的だ。在宅でも手軽に睡眠データが収集できるので、収集できるデータの量が増えることも期待される。同社によると、健康経営を目的とした利用のほか、ある国立大学の医学部では睡眠と運動の関係を調査するためにも用いられているという。 スリープテックは年々進化する一方で、製品やサービスが急激に増えたことで玉石混淆の状態になり、その質を疑問視する声も出始めている。そこで国内では、経済産業省の「ヘルスケアサービスガイドライン等のあり方」に準拠する形で、エビデンスを評価する「スリープサポート認証制度」がこの7月にスタートした。