Luupは「社会の公器」になれるか、創業者が語る戦略と責任、覚悟
11月25日発売のForbes JAPAN2025年1月号の特集「日本の起業家ランキング2025」で3位に選ばれたのは、Luupの岡井大輝だ。 ルールメイキングの地道な活動を経て、いよいよ本格的な成長フェーズに。新たな交通インフラとして社会の信頼を得るための取り組みにも重点を置く。 Luupが手がける電動マイクロモビリティ(電動キックボード、電動アシスト自転車など)のシェアリングサービス「LUUP」は、この1年で飛躍を遂げた。都市部を中心に、交通手段としての認知度は着実に高まっている。創業者で代表取締役CEOの岡井大輝にとっても、「大きく事業が進展した」実感がある。 2023年7月、「特定小型原動機付自転車」という新しい車両区分を設けた改正道路交通法が施行された。従来は原動機付自転車扱いだった電動キックボードが、一定の速度制限のもとに16歳以上なら免許不要、ヘルメット着用は努力義務で利用できるようになった。マイクロモビリティ推進協議会の会長でもある岡井自身が時間と労力をかけて地道に取り組んできた安全な利用と環境整備のためのルールメイキングが結実し、サービスを広く展開しやすくなった。 現在、全国11エリアでサービスを提供し、車両数は約3万台、累計アプリダウンロード数は300万以上。競合サービスとは桁違いの規模に成長している。岡井は、ポート(駐輪場)数とその設置密度を急ピッチで上げたことが想定以上のインパクトをもたらしたと見ている。ポート数は23年7月時点で3,700カ所程度だったが、24年10月には1万カ所を超えている。 同じエリア内でポート数が3倍に増えれば、乗るときの選択肢が3倍になるだけでなく、降りる場所の選択肢も3倍になり、利便性は指数関数的に高まっていく。結果として、ユーザーの利用傾向に変化が生まれているという。 「数年前はLUUPのモビリティって観光やデートを中心に使われる乗り物だったんです。渋谷など大きな繁華街に数十カ所しかポートがなければ、むしろそういうふうに使うしかない。でも、ポート数が増えて密度も高まり、多くの人が生活の足として使えるサービスになってきた。現在は、通勤、通学、買い物など日常での利用が8割以上を占めるようになっています」 ■新たな経営体制の真意 しかし、追い風だけを感じて走り続けてきたわけではない。社会的責任に対する自覚が、これまでとは違うレベルで高まった。ユーザーの急増に伴い安全対策への取り組みも従来とは異次元の注力が必要に。岡井は「この1年間で80回以上、自治体や各地域の警察、もしくは僕ら独自で安全講習会を行ってきました」と説明する。 LUUPの利用開始前には、アプリで交通ルールのテストに満点合格し、公的な年齢確認書類の提出が必要だが、利用開始後のルールについても安全対策を強化している。もともと飲酒運転などの重大な違反は発覚次第アカウントを凍結していたが、軽微な違反を繰り返すユーザーへの対応には課題があった。そこで24年からは、軽微な違反であっても繰り返し起こせば、その内容や回数に応じてアカウントを30日間凍結する制度を導入した。