Luupは「社会の公器」になれるか、創業者が語る戦略と責任、覚悟
インフラを担う「社会の公器」にふさわしい経営
「現状、サービス提供エリアの住民の皆さんにご心配をおかけしているのは確かです。警察の統計によれば、ユーザーの違反の多くは信号無視や通行区分違反などの基本的なルール違反で、それがペナルティをくぐりぬけてしまうようでは多くの住民の納得や安心を得るのは難しい。ゼロに近づける努力をもっともっとしていかなければならないですし、LUUPを利用しているのは交通ルールを守る人だけだよね、と世間に思ってもらえるサービスにしていく必要があるんです」 さらに、これまで検知できなかった違反や悪質行為などをGPSやセンサー、カメラなどを使って検知できるようにするなど、違反を根絶するための新しい技術開発にも投資する。「それが僕らの責任だと思っています」と岡井は言い切る。 Luupが目指すのは、電動マイクロモビリティによって既存の公共交通網を補完するラストワンマイルの手軽で安全な移動手段を全国であまねく提供すること。「街じゅうを『駅前化』するインフラをつくる」というビジョンを掲げている。単なる営利企業ではなく、まさにインフラを担う「社会の公器」にふさわしい経営を考える段階に入ったと岡井は見ている。 そうした取り組みのひとつが、23年7月に提供開始した「LUUP for Community」だ。地方の自治体や離島のリゾート地など、公共交通機関が不足している地域向けの導入パッケージで、エリアの特性に合わせて車両台数や料金、営業時間等を柔軟に設定できるほか、地元企業とLuupが連携してオペレーションの役割を分担する座組だ。 実証実験を経て、すでに全国20カ所以上の導入実績があり、協議中の案件も複数あるという。「日本のほぼすべての自治体、エリアに導入できると考えていて、社会課題の解決に貢献するとともに、当社の主要事業にも育てられると思っています」。高齢者や身体が不自由な人でも安全かつ手軽に乗ることができるユニバーサルな3輪、4輪の電動マイクロモビリティの開発も進めており、社会実装を急ぐ。 24年10月には新たな経営体制も発表し、社外取締役に元日本航空社長の大西賢らを、監査役には元警視総監の樋口建史らを迎えた。「社内のメンバーよりも社外の取締役・監査役が多い。Luupが社会の公器を担うのにふさわしい経営になっているのか、厳しく指導してもらう体制にしたつもりです。事業の結果で社会の信頼を勝ち取っていく段階になったと自覚しています」と話す岡井の表情には、新たな決意がにじむ。 岡井大輝◎東京大学農学部卒。その後、戦略系コンサルティングファームを経てLuup を創業。代表取締役社⻑兼 CEOを務める。2019年5月には「マイクロモビリティ推進協議会」を設立し、会⻑に就任。 「Forbes JAPAN」2025年1月号では、「日本の起業家ランキング 2025」BEST10に選出された10組の起業家たちのインタビュー記事のほか、日本発の主要なスタートアップ起業家を網羅した新企画「日本の起業家名鑑400」、VC業界が注目する「日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング」、Forbes米国版が次なるユニコーン企業25社を選出した「NEXT BILLION-DOLLER STARTUPS」の最新版も掲載。スタートアップ・シーンの今と未来が見えてくる決定版として、内容盛りだくさんでお届けする。
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