「一体どこがビジネスバイクなのか!?」お蔵入りになったホンダ125ccスクーターの真相
どうせならふた通り。『尺』と『坪』を作る
車体を延長した検討試作で、片持ち構造のシートフレームでサーフボードが載せられるビジネスバイクの構想はある程度固まったのだが、なんと出羽はその大事な要素となるシートフレームを、外して乗ってみたいという衝動にかられたという。 すぐそれを実行に移してみると、フロアに座って走る目線の低さとスピード感に新たな面白さを見出してしまった。そうなると、もうどうにも止まらない。肝心のサーフボードを積むモデルの検討は同じチームメンバーにお任せして、出羽自身はその車体を使った遊びバイクの検討を始めてしまったのだ。 その要であるシート高は出来るだけ低くしたいが、それにも限度がある事、多少なりとも収納スペースは用意したい。その場合は何が収納できて、何が収納できないのかリサーチも行われた。その一方で「サーファーの調査のために江ノ島に出張に行かせろ」とか、「荷車はひとり乗りでいいのだから、シートはデタッチャブル(脱着可能)だ」と、誰もが面白がってフリーダムな造形に夢中になっていった──こうして、2タイプのモデルが出来上がってしまったのである。 積載性を最大限に高めるためフロア面積を最大化したものを『坪』、ロー&ロングの車体で走りのフィーリングを求めたものを『尺』と名付けた。「ビジネスバイクとは何か?」から始まった検討が、ひとつのプラットフォームで、ビジネスと遊び、ふた通りに使えるというコンセプトがこうして固まったのであった。 「予想外に、その取り組みを中野さんが面白がってくれたのが良かった。結局、素材が面白いと、色々な発想や手段が湧いてくるものだ」と出羽は言うが、スタイリングコンセプトを決めていく過程で、彼の思いつくキーワードは『シャープ』、『シブい』、しまいには『ガーンッ』と、どんどん抽象化していった。フリーダムにものを考えていると、表現がどんどん子供になっていくのは理解できる。が、それを形にしようする方はたまったものではない。 「デザインを担当した立石は、『シブい』と言われても、具体的なニュアンスが分からないと困っていた(笑)」(出羽) 「そもそも出羽はデザイナーではないので、自分で絵を描いての表現はできない。故に自分の中に湧き出るイメージを、なんとか言葉で伝えようとしていたのだ。それを立石や自分は必死に理解しようとした。そうやって、出羽の考えるイメージが具現化していった」と、立石とともにデザインを担当した久米泰生は言う。 その結果、決定したライポジやスタイリングイメージは以下のようだ。この言葉からイメージできるバイクの、どこがビジバイになるのか教えて欲しいものだ。『彼らの世界がさりげなく匂うディティール』って、いったいなんですか?