ノンアル市場、健康食品コラボに商機
政府がアルコール健康障害防止に本腰を入れ始めた。少量の飲酒でも高血圧や男性の食道がん、女性の出血性脳卒中などの疾患リスクが高まることに加え、20歳代の若年者では、脳機能の低下、中高齢者では飲酒による転倒や骨折、筋肉の減少(サルコペニア)の危険性が高まると警鐘を鳴らす。こうした事態を踏まえ、今年2月には「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表。アルコール健康障害の発生を防止するため、多量飲酒を避けるなどの必要性を発信した。 アルコールの過剰摂取の抑制に一役買いそうなのがノンアルコール飲料だ。筑波大学の吉本尚准教授らが実施した調査では、ノンアルコール飲料の摂取で飲酒量が減少し、飲酒量減少効果は調査終了8週間後も持続したという。ノンアル摂取により、飲酒量は1日当たり純アルコール換算で平均11.5g減少した。アルコール摂取の抑制に一定の効果があることが示された。 マーケットでもノンアル飲料の商品開発は活発だ。今年4月には、ビール醸造後にアルコール分を完全に取り除く新たな製法で仕上げた「アサヒ ゼロ」が発売。ビールの味わいを目指すべく、麦芽エキス以外は、ビール(スーパードライ)と同じ原材料を使用。味わい重視の商品化が進むことで、ビール党をノンアル市場に引き込みたい考えだ。 ノンアルユーザー増加に伴い、潮流は健康志向にも。昨今、健食素材を使った商品開発で付加価値を生み出そうとする機運が徐々に高まっている。今年は「カロリミット」(ファンケル)ブランドのノンアルが発売となった。「カロリミット ノンアル梅酒テイスト」(メルシャン)は、糖や脂肪の吸収を抑える機能を持つ難消化性デキストリンを配合。梅酒はカロリーが高いというイメージ払拭に成功し、「発売1ヵ月で年間販売目標の6割を突破した」という。 昨年11月には、「L-92乳酸菌」を配合したノンアルカクテル商品も登場した。免疫機能の維持をテーマとする機能性表示食品となっており、アルコール分0.00%、カロリーゼロ、糖類ゼロというギルトフリー訴求も行う。 ノンアルビールは、必須アミノ酸やビタミン類、ミネラル含有量を打ち出した輸入品も。「ヴェリタスブロイ」(パナバック)は、フィジカルサポートドリンクとして体力消耗の激しいアスリートに訴求するほか、「日本人の食事摂取基準」「栄養機能食品基準」に対する充足率も打ち出している。 ビール風味のプロテインドリンクも。「BeRule ノンアルコールラガービール風味ホエイドリンク」(イムレー・バイオテック)は、ホエイプロテインを10g配合。「ランニング後やトレーニング後」「減量中」の摂取シーンを訴求する。ハイボールテイストを含めたシリーズ累計出荷は50万本を突破した。 飲食店では、ノンアル飲料の提供を強化する動きがじわり浸透。飲食店ドットコム(シンクロ・フード)調べによると、「約23%の飲食店において、ノンアル飲料・低アルコール飲料の注文量が増えた」という。酔いたくないが、お酒の雰囲気は楽しみたいニーズを示すものであり、新たなビジネスチャンスを予感させる。健康食品コラボの新市場創出に今後期待したい。