「私は批判に対処するエキスパート」スペインを欧州王者に導いたデ・ラ・フエンテ監督の知られざる過去と素顔。就任当初は場違いな印象も...【コラム】
「私の人生にはネガティブな感情を溜め込む時間はない」
デ・ラ・フエンテは、代表監督に就任し、初めて招集メンバーを発表した後、緊張した面持ちで記者会見に臨み、どうしてセルヒオ・ラモスを外したかという記者からの執拗な質問に、何十回と答えた。スコットランドに0-2で敗れた2戦目(EURO予選第2節)の後は激しい批判にさらされ、場違いな印象も与えていた。 準決勝でフランスを2-0で退け、決勝に駒を進めた後、自らの正当性を証明するために歩んできた茨の道についてこう語った。 「常に批判を受け入れてきた。私は批判に対処するエキスパートだと思う」 現役時代から親交がある何人かの友人は、優れた耐摩耗性を持ったチタン合金並みの信念を持っていると口を揃える。デ・ラ・フエンテ自身はその理由としてカトリック教会の教えを挙げている。 「私は信仰心が厚く、熱烈な信者だ。それは私にとって良いことで、神のサポートを受けながら、ある種の悟りを得て決断を下すことができる」 ドナウエッシンゲン(EURO期間中のスペイン代表のベースキャンプ地)での滞在中、彼はいつものようにミサに行くことはできなかったが、毎日祈りを捧げ、精神的な支えになるようなルーティーンを変わらず続けていた。午前中、スタッフと食べる軽食も、ジムでの早朝のトレーニングも欠かさなかった。常に体を動かしているのは、健康を維持するだけでなく、心をコントロールするためのプライベートな空間を確保するためでもある 優勝までの苦難の道のりは、13への愛着と同様に、デ・ラ・フエンテを強くした。「私は常に物事をはっきりさせてきた。グラディエーターのようにね。地上から、サーカスから来て、そこで戦ってきたんだ」と決勝戦前日、振り返り、そしてこう強調した。 「私は幸せ者だ。ポジティブなことしか考えない。私の人生にはネガティブな感情を溜め込む時間はない。良いことしか覚えていない」 10年以上にわたって年代別の代表を指揮した経験を買われ、フル代表の監督に昇格したが、当初は、クラブレベルでの実績がないことを非難された。 「私ほどスペインサッカーの現在と未来を知っている者はいない」と反論していたが、見事有言実行を果たした。ロドリがその真意を代弁する。「サッカーチームにおけるメンタルの強さは徐々に醸成されていくものだ。僕たちの大半はU-19やU-21のチャンピオンだった。ミステル(監督)は自分が何をしているのか分かっていた」 プレーモデルの構築も有言実行だった。縦のスピードをより意識させることで、忘れられない試合の連続で世界中のファンを魅了した。 7月14日、欧州王者の肩書を得たデ・ラ・フエンテは、たくさんのメッセージを受け取った。全員に返信するには時間がかかるだろう。いつも時間をかけて1人1人、送る相手に合ったメッセージを書くからだ。 文●ダビド・アルバレス(エル・パイス紙スペイン代表番) 翻訳●下村正幸 ※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙のコラム・記事・インタビューを翻訳配信しています。
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