予想される田中将大の米移籍の値段はなぜ高いのか?
■各球団が田中将大に関心を示す大きな理由 さて、1億ドル(約100億円)に達するとの予想もあるのは、すでに触れたように、移籍市場に魅力的な投手が少ないからでもあるが、加えて、田中を獲得してもドラフト指名権を失わないことが、田中株の上昇に繋がっているよう。 メジャーには昨年から「クオリファイング・オファー(QO)」という制度が導入された。FA選手に対して所属球団が、まず優先的に1年契約を提示できるというもの。そのFA選手が、この提示を拒否して、他球団に移籍した場合、QOを行使した球団は、選手を失った補償として、来年夏のドラフト会議で優先的に新人選手を指名できる権利が与えられる。 例えば先日、黒田博樹は、ヤンキースからQOを受けたが、仮にヤンキース以外のチームが、QOを受けている黒田と契約する場合、ドラフト1順目指名権(上位11位までは保護され、その場合は2巡目の指名権)を補償としてヤンキースに譲渡しなければならない。 実は、それが足かせとなり、昨年は、QOを受けたFA選手の獲得に各チームは慎重となったわけだが、田中は、その対象外。結果として、彼がより魅力的に映る。また近年、ヤンキースなどは、贅沢税の支払いを避けるため、年棒の圧縮をしたりしているが、日米間で作られていたポスティング・フィーは贅沢税の対象とはならない。この点でも、田中が魅力的に映っているようだ。 ■”登板過多”を不安視も日本では一般的? こうなると、高騰に歯止めをかけるような要素が見当たらないものの、田中が日本シリーズで連投し、175球を投げたことは、米国でも報じられた。 「ニューヨーク・タイムズ」紙は、スカウトの「少し心配だ」というコメントを紹介しながら、「あの175球により、彼と契約を考えているメジャーのチームは、不安を感じたのでは」と懸念を示している。 確かに、米国の基準では常識外。何らかの影響がある可能性は否定できない。しかしながら、波紋の広がりはこれまでのところ限定的。田中は、その程度で壊れる投手ではないとみたか、日本人投手の球数の多さに関しては、すでに免疫が出来ているのか。 それよりも田中を阻むものがあるとしたら、新ポスティングシステムの合意の遅れだろう。見通しが不透明だが、来週のオーナー/GMミーティングあたりで何か発表があるのだとしたら、そのとき、いよいよ田中を巡る腹の探り合いが本格化する。 (文責・丹羽政善/米国在住ライター)