パイロットの飲酒問題、なぜ繰り返される? 2030年問題が迫る航空業界、その危機と安全確保に必要な対策とは
連続する飲酒問題と遅延
2024年12月1日、メルボルン発成田行きのJL774便で、機長ふたりと副操縦士ひとりを含むパイロット三人のうち、ひとりの機長からアルコールが検出された。 【画像】「えぇぇぇ!?」 これが1960年代の「客室乗務員」です! 画像で見る この日、体調不良を訴えた機長のひとりが出勤時間を1時間遅らせることになった。もうひとりの機長は定時に出勤したものの、アルコール検査で基準を超えるアルコールが検出された。その結果、便は3時間の遅れとなった。運航後の調査で、ふたりが社内規定を超えるアルコールを摂取していたことが判明した。 この事態を受けて、JALは12月11日から、パイロットに対してステイ先での飲酒を禁止する措置を取ることに決めた。この措置は、実は2024年4月26日からすでに導入されていた。 同日、ダラス・フォートワース発羽田行きのJL11便の機長のひとりが深酔いし、ステイ先で騒ぎを起こしたため、乗務前のアルコール検査ではアルコールが検出されなかったものの、便は欠航となった。この措置は10月1日に解除されたばかりだった。
飲酒による航空事故の実態
飲酒は判断能力を鈍らせ、事故を引き起こす原因となる。 実際に、飲酒が原因で墜落事故が発生した例がある。1977(昭和52)年1月13日、JALカーゴの貨物便がアラスカ州のアンカレッジ国際空港を離陸した直後に失速し、墜落した。 この事故で死亡した米国人機長の体内からは多量のアルコールが検出され、離陸時に正常な判断ができなかったことが事故の原因とされた。 また、1994(平成6)年4月26日に名古屋空港で発生した中華航空140便の事故でも、航空機乗組員の体内からアルコールが検出されたことが明らかになった。 この事故に関して、飲酒が直接的な原因であったかは示されていないが、当時の運輸省は航空会社に対して乗務員の飲酒について厳しく指導を行った。
飲酒問題解決の難しさ
さて、なぜパイロットの飲酒問題は解消されないのか――。 その理由のひとつは、飲酒が社会的に広く容認されているからだ。違法薬物とは異なり、飲酒は日常的に行われる行為であり、法的に罰せられることはない。お酒は嗜好(しこう)品であるため、飲酒が習慣化し、時には中毒になる人が出てくるのは避けられない。 特に「酒に強い」と自負している人は、少し飲んでも仕事に支障がないと考えがちだ。しかし、その「少し」が酔いを呼び、感覚がまひすることで飲酒量が増えていくことになる。 これはパイロットに限った問題ではなく、一般的な問題でもある。そのため、自動車の飲酒運転に対して厳しい法的措置や社会的制裁が取られているにもかかわらず、飲酒運転やそれにともなう事故はなくならない。 パイロットの飲酒問題を根本的に解決しようとするなら、飲酒そのものを社会全体で法的に禁止しなければならないが、現実的にそれは不可能だ。だからこそ、パイロットの飲酒問題は今後も続く可能性が高い。