「刑事司法の一翼を担う検察として、大変申し訳なく思っている」 再審で無罪が確定した袴田巌さんに静岡地検の検事正が直接謝罪
58年前、旧清水市で一家4人が殺害された事件の再審で、無罪が確定した袴田巌さんに静岡地検の検事正が直接謝りました。 ●静岡地検 山田英夫検事正: 「静岡地方検察庁検事正の山田でございます。本日は袴田巌さんの事件の捜査公判を担当いたしました静岡地検の検事正として、検察の思いを伝えに参りました。まず袴田巌さんが相当の長期間にわたり、法的地位が不安定な状況にあり、その間巌さん、そしてひで子さんが言葉にできないようなつらい日々を過ごされたことにつきまして、刑事司法の一翼を担う検察として、大変申し訳なく思っており、そのことについて直接お伝えにまいりました」 58年前、旧清水市でみそ会社の専務一家4人が殺害された事件で、一度死刑が確定した袴田巌さんは、9月に再審で無罪となりその後確定しました。 これを受けて10月、検察のトップ・畝本直美検事総長が談話を発表。無罪判決に対して「強い不満を抱かざるを得ない。控訴して上級審の判断を仰ぐべき内容」と述べていました。 これを弁護団が「袴田さんを犯人視している」として撤回を求めていました。山田検事正はこれについても触れました。 ●静岡地検 山田英夫検事正: 「当然のことでございますが、検察として今回の無罪判決を受け入れ控訴をしないと決めたものである以上、この事件の犯人が袴田さんであるというようなことはもう申し上げるつもりはございませんし、犯人視することもないということも直接お伝えしたいと思います。改めまして大変申し訳ございませんでした」 ●袴田ひで子さん: 「58年前の事件ですのでね、私たちは今更検察にどうこう言うつもりもございません。もう運命だと思っております。無罪が確定いたしましてね今は大変喜んでおります」 ●袴田巌さん: 「世界をうまく治めるっていうことでね、どこまで折れなきゃしょうがないのかっていうことそれが問題」 検事正の話を静かに聞いていた袴田さんについてひで子さんは。 ●ひで子さん: 「だいぶ分かってきていると思う。無罪になったってことを。これで死刑囚じゃなくなってくるでしょ、それが大事。巌に(無罪になったと)分からせることをしていただいた方がいい」 「犯人視」に関しては ●ひで子さん: 「私は元々巌は無実だから無罪になると思っていたの最初から。だからびくともしなかった」 山田検事正は謝罪後取材に応じ、袴田さんを犯人視しているという指摘は「誤解だ」と説明しました。 その一方で捏造については「有罪立証に向けた捜査の不備や活動の問題点を検察として受け入れているものではない」として検事総長談話の撤回はしませんでした。 検事正謝罪の場に同席した弁護団の小川秀世主任弁護人は。 ●小川秀世主任弁護人: 「やっぱり謝罪に来られるということは一定の誠意を感じさせるところはあったと理解している」 ただ総長談話を撤回しなかったことについては。 ●小川秀世主任弁護人: 「やっぱりどこかでそれ(談話)をまた問いただす、撤回を求めるという場面が出てくると思っている」