GIGA端末更新で新たな地域格差?どうなる教育DX 共同調達で期待される底上げ、校務DXも課題
まず達成すべきは「舞台」の整備
――文科省ではデジタル行財政改革会議において、GIGAスクールに関わる「教育DXに係る当面のKPI」を示しています。このKPIを達成していくうえで重視すべことは何でしょうか。 文科省が示したKPIは、回線速度の改善やセキュリティポリシーの策定、校務DXといった「ICT環境の基盤整備」に関するものと、児童生徒の端末活用や情報活用能力など「ICTの利活用」に関するものに大きく分けられます。 このうち教育委員会としてまず達成すべきなのは、基盤整備に関するKPIです。ICT環境という「舞台」が整備されていない中で、現場の教員にICTを活用した個別最適な学びや協働的な学びの充実を求めても、教員に負担を強いるばかりになります。 確かに「子どもたちは端末を使って、こんな表現活動に取り組んでいます」といったキラキラした実践は目につきやすく、行政としても外部にアピールしやすいでしょう。しかし、優先順位を間違えないことが大切です。 ――デジタル行財政改革会議では、校務DXの遅れも指摘されていました。 いまだに解消されていない大きな課題として、多くの学校において校務系のネットワークと学習系のネットワークが分離されているために、現場の教員に不必要な負荷がかかっていることが挙げられます。ネットワーク間で情報のやり取りをする際には、管理職の許可を得たうえで、所定のマニュアルに沿って作業を行うといった手間が生じているのです。 確かに以前のガイドラインでは、セキュリティの観点からこうしたやり方が推奨されていました。しかし現在は、ゼロトラスト型のセキュリティモデルを採用して、ネットワークの分離によらないセキュリティ対策を実装し、強固なアクセス制御に基づいた環境を整えることで、校務系と教育系のシステムを安全に連携させる「次世代型校務支援システム」への移行が強く求められるようになっています。 メーカーもクラウド対応が追い付いていないという課題はあるのですが、文科省が示したKPIの中にも「次世代の校務システムを導入済みの自治体の割合を、令和11年時点で100%にする」という目標が設定されています。 令和11年というと先の話のように感じますが、これは文科省から自治体への「令和11年までには必ずシステムの更新を行うはずだから、その際には絶対に次世代型に切り替えるように」という強いメッセージ。自治体はそこをしっかりと読み取るべきで、先送りしてはいけません。