「子どもができないと女性失格」という思いに囚われ――益子直美が振り返る不妊治療
「子どもを産んで当然」という価値観に苦しんだ
――不妊治療中は誰かに相談されていましたか? 益子直美: 相談するのは基本的に主人だけでした。家族以外だと、同性の親友一人だけには話していました。相談といっても、主人は私がつらいと弱音を吐いたら「もうやめようよ」と言うような優しい人だし、全面協力してくれていたので、できるだけ面白おかしく「またダメだった~!」と報告していたんです。主人には申し訳ない気持ちでいっぱいで、どんどん追い詰められていきましたね。強いふりをしていましたが、日記にはちょこちょこネガティブなことを書いて気持ちをぶつけてました。 両親にも言えませんでした。子どもができない子を産んでしまったと思わせたら申し訳ないと思って、私を産んだ母にも言えなかった。当然、義理のお母さんにも言えなかった。親には不妊治療が全て終わってから話しました。 ――不妊治療をしていることに後ろめたさがあったのでしょうか? 益子直美: 世間は不妊治療に対してまだまだ閉鎖的だと思い込んでいました。「結婚したら子どもを産んで当然」とか「子どもができないと女性失格」みたいな価値観を自分の中に持ってしまっていたんですよね。昔、私がスポーツ界で経験したときのように「自分の意見を思いっきり言えない」と思っていたかもしれません。 でも、今思うと、やっぱりつらいことは周りに言って共有するのが一番良い。助けてもらったほうがいいです。自分一人で抱え込まずにぜひ弱みは吐いて応援してもらったほうが楽になると思います。私はもうちょっと周りの近い人に話しておけばよかったなという後悔があります。我慢しているとどんどん弱くなるのでよくありません。 ――4月からは不妊治療の保険適用が始まりました。 益子直美: 金銭面の一番大事なところをサポートしていただけるのは本当にありがたいと思っている女性はたくさんいるのではないでしょうか。不妊治療はどこがゴールかわかりませんし。 子どもができて当たり前と思っている男性の方もいるかもしれませんが、全くそんなことはない。本当に子どもを授かるのは奇跡で、出産は命がけです。仕事を休んでも補助金を受け取れるとか、もっと不妊治療に理解のある社会になってほしいです。