誹謗中傷報道に苦しみ裁判で勝訴ーー中島知子が語る「別府移住で笑顔を取り戻すまで」
「雑誌を売らなきゃいけないから、すみません」
事務所との問題や家族との金銭問題……。相次ぐ問題を一つずつ解きほぐしながら説明を試みる中島さんの思いとは裏腹に、メディアの報道は過熱する一方だった。自宅マンション前には、連日マスコミが押し寄せた。ワイドショー番組のカメラの前で「実は家族問題で悩んでいて、ニートの妹が……」と事情を語り始めるとそこでVTRをカットされ、「次は妹さんがおかしいという話が広がっています」とMCに面白おかしく締めくくられたこともあった。 「ある記者の方にはつきまとわれ、細かい動向をネット上に書きこまれたりしました。どこに行って何を飲んでたとか、スーパーで何を買ってたとか(笑)。もう自分で本当の情報を発信するしかないとブログを始め、1日10回くらい投稿したら、『やはり頭がおかしい』と書き立てられ、あの頃はとにかくキリがなかったです」 「目の前にいる報道陣に『雑誌を売らなきゃいけないから、すみません』と謝られ、あげくの果てには『雑誌不況だけど、中島さんとAさんのことを書くと雑誌がとても売れたんです』と感謝されたことまで。なかにはAさんを叩き潰すことをライフワークにしているのではと思うほど執拗な記者もいて。ビジネス的に有利やから表では味方のふりをして、裏ではバッシングをマッチポンプ的にネット上に書き込み続けているとおぼしき人物や、報道で人権をなくした私たちのさらに足元を見てくる最低な人まで現れ、二次被害もひどかったですね」 一方的に誹謗中傷されている被害者が、わざわざ時間をとって「おかしくない」ことを説明しなくてはならない状況にも絶望し、法律の力に頼る決意をしたという。
裁判を起こすのは「名誉を取り戻すため」
2016年までに抱えていた裁判はすべて勝訴ないし勝訴的和解で決着した。 「法廷で『洗脳』が事実無根であると明らかになったこと、最後の裁判が勝訴的和解で終了したことから、一連の訴訟は目的を達しました。一部のメディアからは虚偽報道だったとして謝罪がありました」と弘中弁護士は話す。数社からは数十万~百万円単位の損害賠償金が支払われた。ただ、「日本における名誉毀損の損害賠償は最大でも1000万円程度。海外と比べれば非常に安く、抑止力になりづらい。中島さんの件でも虚偽報道や風評被害の埋め合わせにはまったくなっていない」とも言う。 ではなぜ訴えるのか。 「誹謗中傷が真実でないとはっきりすれば、その人の名誉は回復しますから。裁判所から間違いだと言われたら、もう誹謗中傷は続けられないでしょう。これ以上の誹謗中傷を止めてもらうために、裁判を起こすわけです。 裁判を経て誹謗中傷報道は激減しました。しかしその後も芸能界で『誰かが洗脳された』という話題が浮上するたび『まるで中島さんのように』と引き合いに出され、その都度つらい思いをしてきた。“記号化による人権侵害”ともいえ、厳しく批判したい」(弘中弁護士) 中島さんは被害を振り返る。 「『お騒がせ芸能人枠で取り上げてもいいですか?』という仕事依頼もありました。もういい加減にしてくれって話です。PV数を増やして広告料を稼ぎたいんやと思います。私たちは顔も名前も出されて、深刻な営業妨害を受け続けるんです」