誹謗中傷報道に苦しみ裁判で勝訴ーー中島知子が語る「別府移住で笑顔を取り戻すまで」
元所属事務所との「雪解け」
転機は昨年の暮れに訪れた。16年ぶりに、元レギュラーだったバラエティー番組『ぐるぐるナインティナイン』にゲスト出演することになったのだ。ドッキリかと思ったら、本物の収録だった。 「ナイナイのお二人の温かい“いじり”に、ものすごく救われたんです」 共演者の悩みを聞き出そうとする中島さんに、矢部浩之さんらレギュラーの面々が「占い師ですか」とつっこむ一場面があったのだ。すかさず中島さんも「その話は風評被害だったんで終わりました!」「家賃払ってるわ!」と応戦し、笑いが巻き起こった。 誌面やテレビ画面の向こうから一方的にたたかれてきた彼女にとって、信頼する元仲間の懐を借り、プロとして自ら過去を笑いに昇華する“場”を与えられた意味は、とてつもなく大きかった。 「ナイナイさんの一言でパッとほぐしてもらえて。笑いの腕と優しさがあるからこそ、成し得た技やと思います。『あの古めかしい芸風でまた来られましたか』とか言われて『誰がやねん!』みたいな空気感が、懐かしくて心地よかったですね」 これを機に、全国放送のバラエティー番組へのオファーが急増。この夏には『さんまのお笑い向上委員会』や『THEカラオケ★バトル』『中居正広の金曜日のスマイルたちへ(金スマ)』へのゲスト出演を果たした。
「芸能界の大先輩方が、ご自身の番組に私を呼んでくださったのが、正直すごく嬉しくて。もちろん過去の騒動の事情を知った上でのことやと思うし、詳細は語らなくともオファーをくださること自体が、皆さんからの激励なんやなと思うと泣けてくる。さんまさんも堺(正章)さんも楽屋挨拶で『これから仕事どんどんやっていきやー!』『頑張んなさいよ』と。エールのような言葉が胸に沁みました」 「懐かしいメンバーたちと久々に会えて、めちゃくちゃ幸せで……。こうした機会をいただけたことに、ただただ感謝しています」 『さんまのお笑い向上委員会』では元所属事務所の後輩芸人とも共演した。 「いまは出世して事務所の取締役になっている当時の私のマネージャーさんが、収録現場で気さくに声をかけてきてくれたんです。私に同行していたAさんの肩をポンとたたいて、『Aさん、久しぶり~』って。ホッとした半面、気が抜けましたね。何だそりゃっ⁈って(笑)」 中島さんにとっては「さあ、ここから」というタイミング。本格復帰に向けて、心の準備は整ってきた。「ただ、いまだにネット上の誹謗中傷を見つけて心を潰されそうになる日があります。前所属事務所とも係争していたメディアとも、当事者間で既に問題は解決してるのに、どうしてバッシングされるのか……」。弘中弁護士もこの件については強い憤りを感じており、「現在、ネット上の誹謗中傷コメントをリストにまとめています」と話す。特にひどいものや新たに書き込まれたものには民事のみならず刑事訴訟も視野に入れ、名誉毀損罪を問う予定だ。 「『あんなバッシングを受けてよく死ななかったね』とよく言われるけど、いやいや、死にかけたから。でもAさんほどじゃない。Aさんはよく死ななかったと思う。『死ぬかと思ったけど、死なねぇな』みたいな遊び感覚の“ネットいじめ”は狂ってるし、いまはいじめる側が逆に浮いてきちゃう時代やと感じています。ネット上の誹謗中傷で苦しんでいる方はどうか諦めないで、いい弁護士さんを見つけて相談してほしいです」 虚偽報道がつくり出した“病みキャラ”。本人はどう思って過ごしていたのだろうか。 「アホくさすぎると思ってましたよ(笑)。私もAさんももともとめちゃくちゃ明るい性格ですから。温泉入ってますます元気になった気もしますし。突然やってきた私をやさしく受け入れてくれた大分のみなさんには本当に感謝しています。いつか私のおしゃべりでお客さんを元気づけられるスナックを地元で開くのが夢です」 「大分は別府市内だけでも8つの温泉郷があって、泉質・効能の違う名湯だらけなんです。何かに悩んでいる方、生きづらさを感じている方、お疲れの方もそうじゃない方もぜひつかりに来てください!」 戦い続けた10年。温泉と人に少しずつ癒やされて、ようやく心から笑えるようになった。
中島知子(なかじま・ともこ) 1971年生まれ、京都出身。1993年にお笑いコンビ「オセロ」を結成。2013年に解散。これまで『ぐるぐるナインティナイン』『笑う犬の冒険』『世界の果てまでイッテQ!』など数多くのバラエティー番組に出演してきた。『アットホーム・ダッド』『義経』『相棒 Season 6』などドラマでも活躍。現在は大分で移住生活を満喫している。『中島知子のおんせんさんぽ』(テレビ大分)『金曜ビッグバン!』(RKB毎日放送)、『中島知子のテレブログ』(OAB大分朝日放送)にレギュラー出演中。