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水の事故防止に「目を離さない」では不十分――マンガでわかる水辺のヒヤリ体験 #こどもをまもる

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全国の小中学校が夏休みシーズンを迎えた。新型コロナウイルス感染症の「5類」移行に伴う「脱コロナ」ムードが追い風となり、今夏は数年ぶりに水辺のレジャーを予定している人も多いだろう。

公益財団法人 河川財団の調査によると、7~8月は河川等の水難事故が最も多発する時期で、年間の事故件数の50%を占める。

Yahoo!ニュースのコメント欄で子ども時代の水辺のヒヤリ体験を募集したところ、離岸流に流されパニックになった経験や、川で流され死を覚悟したエピソードが寄せられた。こうした水辺のヒヤリ体験をマンガ形式で紹介するとともに、専門家に対策を聞いた。(監修:斎藤秀俊、着衣泳監修:岩崎恭子/ Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)

この記事、ざっくりいうと?
  • 流されてしまったら1秒でも長く浮くことを考えよう
  • 子どもから「目を離さない」ではなく「常に寄り添う」
  • 特に今年は監視員がいても要注意

海でのヒヤリ体験

漫画

斎藤秀俊さんのプロフィール

斎藤氏
斎藤氏
マンガのポイントは、砂が削られて立てなかった、というところです。この人は立ったまま浮くことができなかったため、焦ってしまったのでしょう。泳ぎの得意な人でも立ったままでは意外と浮けないという盲点があります。流されたときは、無理に泳ごうとせず「浮いて待つ」ことが原則です。立ち泳ぎには訓練が必要なため「背浮き」を意識してください。

また、海岸に打ち寄せた波が沖に向かう「離岸流」は、専門家でも見ただけでは判別ができません。流れから脱しようと泳ぐと体力を消耗し溺れる危険があります。無理せず1秒でも長く浮き続けることを心がけてください。

遠浅の海であれば大波に引きずり込まれる心配はあまりないので、できるだけ膝より浅い場所で遊ぶようにすると安心です。

図解

意図せず服のまま落ちてしまったら?

図解

着衣や持ち物に備わっている浮力の助けを借りながら水に浮く方法を「着衣泳」と呼ぶ。泳法ではなく、水難に万が一遭った場合に自分の身を守るための方法論全体を指す言葉だ。 競技引退後、長年に渡って着衣泳の啓発に取り組んでいる岩崎氏に話を聞いた。


岩崎恭子さんのプロフィール

Q. 水辺に遊びに行く際に気をつけることは?


岩崎氏
岩崎氏
まずは備えが大事です。その日の天気や、泳いでいい場所かなどを確認してください。台風の後の晴れ間はいくら天気がよくても増水しているため、水辺には絶対に近づかないでください。

Q. 水辺で遊ぶ際の適した服装は?

岩崎氏
岩崎氏
ライフジャケットの着用が一番有効です。また、日焼けは気づかぬうちに体力を奪うため、海ではラッシュガードやTシャツで肌を守ることも効果的です。川に入る際にはスニーカーがおすすめです。足の保護に加え、流された際に体を浮きやすくしてくれます。普通のランニングシューズでも十分ですが、エアーの入っているものだとより安心です。足が浮くことで背浮きがしやすくなります。

Q. それでも溺れてしまったら


岩崎氏
岩崎氏
まずは慌てずに浮くことを意識してください。背浮きで呼吸を確保できたら、次に浮き具を探してください。同時並行で周囲の人は浮き具を投げ入れてください。空のペットボトルやクーラーボックス(※)、バケツ、発泡スチロール、木材のほか、未開封のお菓子の袋も浮力があるので、数個をビニール袋に入れて口を縛れば浮き具となります。
※大型のクーラーボックスが溺者と衝突すると危険なため、投げ入れる際は注意が必要

Q. 着衣泳についてもっと知りたい場合は?


岩崎氏
岩崎氏
自治体やスイミングスクールなどさまざまな団体が体験会を主催していますので、お近くの情報をご確認ください。まずは知識を持って、実際に体験していただくことが重要です。経験があることでいざというときに身体が動きます。


川でのヒヤリ体験

漫画
斎藤氏
斎藤氏
川の底の深さは常に変化しているものと考えてください。特にマンガの事例のような台風の後は、大きな岩の下流側などが増水時の流れによって底が深くえぐられることがしばしばあります。

川で尻もちをつく際は川の上流を向くことを意識してください。体が流れに対して抵抗できるため安定感が増します。

保護者が水遊びの準備をしている最中に、子どもだけで溺れてしまうことはよくあります。 保護者は必ずお子さんと一緒に水に入るようにしてください。

図解

プールでのヒヤリ体験

漫画
斎藤氏
斎藤氏
子どもは隙間があったらそこに体を入れたくなるもので、マンガの事例もそうだったのでしょう。そのまま抜けなくなるという事故はこれまでにもとても多いです。そのため最近ではプール内の設備に体の一部が入らないような対策が進んでいます。ですが海外のプールは対策が遅れている場合もあり、日本と同じ感覚で入ると非常に危険です。

ビート板の事例のように、お子さんを見ているつもりになっていて、思わぬ事態になることも。命が失われた例も少なくありません。「目を離さない」ではなく「常に寄り添う」感覚で接してください。

図解

夏期水難の原因行為、水遊びが最多

図解
斎藤氏
斎藤氏
水難の原因となった行為別で最も多いのは「水遊び」です。子どもに目を向けると、5~7歳の事故が突出しています。水辺のレジャーを初体験するお子さんが多く、事故リスクの高い年齢層といえます。屋外プールの平均的な深さが1.2m。ちょうど頭までつかる深さです。足がつくと思い込んだままプールに飛び込んで溺れるケースが相次いでいます。

2番目に多い行為は「魚とり・釣り」。実際、釣りに行って転落して溺れてしまうというケースは非常に多く、ライフジャケットの着用を推奨します。着衣泳の習得も生存率を高めるでしょう。

また、今年の特徴でいえば、これまでの自粛の影響により、監視員の経験不足やスキルの低下が懸念されます。監視員がいるからといって慢心せずに、ご自身がしっかりとお子さんに常に寄り添うようにしてください。

そして、子どもの水難事故の何倍も大人が被害に遭っているのです。保護者ご自身が水難に遭わない対策をいくつも講じた上で水辺のレジャーをお楽しみください。様子がおかしいなと感じたら、慌てて飛び込んだりせず現場の管理者に相談したり、119番に連絡したりするようにしてください。



子どもをめぐる課題#こどもをまもる)」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。 子どもの安全、子どもを育てる環境の諸問題のために、私たちができることは何か。対策や解説などの情報を発信しています。

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