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「学校に行きたくない」と言われたら? 悩む保護者、通信制の学校など模索 #こどもをまもる

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不登校の子どもが増え続けている。文部科学省によると、2022年度の小・中学校の不登校児童生徒数は29万9048人と前年度から22.1%増加し、過去最多となった。

2月に入り受験シーズンが本格化する中、不登校の子どもの進路が気になる保護者も多いのではないだろうか。Yahoo!ニュースのコメント欄で、不登校の子どもが学べる場所や方法について意見を募集したところ、学校以外の選択肢や親子で試行錯誤した経験談などが寄せられた。多様化する学びの環境について、専門家とともに考える。(Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部/監修:おおたとしまさ)

この記事、ざっくりいうと?
  • 費用面などの課題もあるが、学校外の学び場を上手く活用しているケースも
  • 「不登校特例校」の関心が高い地域の一部に設置が間に合っていない
  • 識者は「多様な学びの環境と学習スタイルを組み合わせて活用する」ことを提言

学校以外でどう学ぶ? 課題やその後の進路は?

【みんなで考えよう】不登校の子どもの学びの場として、学校以外にどんな選択肢があると思いますか? #こどもをまもる」のコメント欄には、不登校の子どもの学び場に関する課題やその後の進路など、さまざまな意見が寄せられた。(2023年12月15~18日のコメント、計約350件をもとに構成)

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不登校になったときの学び場として、フリースクールや塾、家庭教師、家庭学習などが挙がっていた。「本人は楽しく過ごしており、家庭教師を付けて学習は学校よりも先に進んでいる」という前向きな声がある一方で、「フリースクールに行くほど経済的に余裕がない」といった金銭的な負担を訴える声があった。

その他、学校には登校できても、教室に入ることができない児童のために用意された校内の支援室などの活用については「職員室前に机が用意されており、さらし者みたいだ」「保健室登校は長く通うと甘えになると感じ、続かなかった」などの懸念も見られた。


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不登校児童のその後の進路については、上図で紹介したコメントのように、保健室や適応指導教室(教育支援センター)に通うことで出席認定を受け、勉強は塾や家庭教師などを活用して卒業や進学を遂げたエピソードが見られた。

一方で、不登校により学びの機会を失い「もっと早くどうにかしたかった」と悔やむ声もあった。
適切な支援を受けられず、学びの場にアクセスできなかった人もいることがうかがえる。


子の接し方、通信制高校...「不登校」の検索前後に見られる関心の移り変わり

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図はLINEヤフーで「不登校」と検索した人が、前後30日間に調べていた検索ワードのデータである。
40代〜50代女性の検索が半数以上で、保護者が不登校に関する悩みや情報を探している状況がうかがえる。

約1カ月前から1週間ほど前までに「学校行きたくない」というワードが見られ、「不登校」を検索した日には「親 しんどい」が最も多く検索されていた。同じ時期に「スクールカウンセラー」「臨床心理士」などの専門家も探している。約1週間後〜30日後までには具体的な通信制高校の名称が多数検索され、進路の模索に関心が移っていく様子が読み取れる。

また、起立時にめまいやたちくらみ、動悸(どうき)などが起こる「起立性調節障害」「スマホ・ゲーム依存症」など、病気に関するキーワードは全期間中に散見された。

「不登校特例校」と一緒に検索された都道府県名を可視化

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不登校の子どもへの対策として、政府は、通常の学校より授業時間が少ないなど学校に行きづらい子どもが柔軟に学ぶことができる「学びの多様化学校(不登校特例校)」の設置を、現在の24校から300校に増やすことを目標に掲げている。

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LINEヤフーのデータで「不登校特例校」と一緒に検索されているワードを見ると、ほとんどが都道府県名だった。上図の全国の不登校特例校の設置状況に照らし合わせると、まだ設置されていない地名の検索も多く、不登校特例校のニーズがある地域への対応が間に合っていないことがうかがえる。一方で今年4月には大阪で不登校特例校が開校予定となっており、以降も福岡、兵庫、埼玉など設置に向けた動きが進んでいる自治体もある。

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また、過去5年間のうち2023年度は「不登校特例校」の検索量が大きく増加しており、関心が高くなっている。

自分に合った学びの環境を選び、組み合わせる

不登校の子どもにとって、理想的な学び場とはどのようなものなのか。また、コメント欄や検索データに見られた課題や悩みに対してはどのような対策が考えられるのか。さまざまな教育現場を取材し、不登校についての著書もある教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏に聞いた。

おおたとしまさ

図解

不登校の子どもを持つ家庭に、オンラインでの交流会や勉強会などを行っている団体「イクミナル」によると、学び環境のコーディネーションとは、不登校児童の多様な学びの機会を確保するために、学校と家庭、当事者と専門家などに分離せずに、必要なことをみんなで考え、よりよい学び環境をつくる関わり合いを意味する。

おおた氏は、この概念を踏まえて学校と何かを置き換えるのではなく、学校が持つ機能を分散し、学校外のさまざまな教育サービスを子どもが自由に選べるようになることを理想に掲げる。

おおたとしまさ
おおた氏
まず、学校自体は多機能で便利な学びの環境なので、決して無理する必要はありませんが、うまく活用してほしいです。上図のように、学校の中だけで学びを完結させるのではなく、塾や習い事などいろんな教育サービスを組み合わせて選べるようなスタイルが理想です。

例えば「今日は学校に行きたくないから、午後からこの習い事に行こう」などと子どもたちが気軽に選択できようにすることです。そうすれば、学校が苦手な子どもでも、その子なりに最大限利用できるはずです。

多様な学びのスタイル

具体的には、どのような学習スタイルがあるのだろうか。

図解

自然の中で学ぶ

おおたとしまさ
おおた氏
例えば平日の昼間に河原など自然の中で学ぶフリースクールがあります。そこでは決まったプログラムはなく、大人も指示をしません。子どもたちがそれぞれ川に飛び込んだり、魚を探したり自由に行動しています。自然の中のあらゆるものが子どもたちの自発性を刺激します。

家庭で学ぶ

おおたとしまさ
おおた氏
ホームスクールは、家庭を拠点とした教育を行うことです。
家庭によって学習スタイルはさまざまで、ある家庭では家事を中心にした家庭学習を組み立てています。親が勉強を教えることもありますが、フリースクールや家庭教師、教育支援センターや放課後デイサービスなどを積極的に活用しているケースもあります。

オンラインで学ぶ

おおたとしまさ
おおた氏
ネット上の仮想空間で、みんなとしゃべったり授業やクラブ活動に参加したりするフリースクールもあります。
ある学校では、不登校の児童支援としてオンライン授業の選択を可能にし、文化祭や修学旅行もオンラインで行っています。

おおた氏によれば、「こうしたさまざまな学びの環境と学習スタイルを組みわせることが当たり前になれば、『不登校』という概念自体が消滅する」という。
「『不登校』という言葉が『学習だけに頼らない学習スタイル』に置き換えられればいいと思います」

検索ワードから見えた保護者の悩み 専門家の解答は

スマホ・ゲーム依存症への対応法は?

子どもの学び場が広がる中で、LINEヤフーのデータでは「スマホやゲームの依存症」の悩みが散見された。どう対応すればいいのだろうか。

おおたとしまさ
おおた氏
本当に依存症になっている場合は、医療機関にかかった方がいいです。どんなに愛情を持っていても保護者が治すことはできません。その手前でゲームやスマホばかりやっている状況をネガティブに捉え、取り上げれば解決するわけではありません。何が問題なのかを考えることが重要です。子どもの気持ちに寄り添い、学校の先生やスクールカウンセラーなど専門家の支援を得ながら、焦らずに対応していくのが基本姿勢です。

「学校に行きたくない」と言われたら

子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、保護者ができることは何だろうか。

おおたとしまさ
おおた氏
本当は教育支援センター(適応指導教室)が相談先になって、その子に合った多様な学び場や支援先を紹介するべきです。しかし、まだまだ過渡期でうまく機能していません。
一人で頑張ろうとせずに、まずは支援団体や家族会などにアクセスすることが大切です。
同じような課題を抱えて荒野を開拓してきた先輩たちからのアドバイスを得て、ようやく自分が次に何をすべきかが見えてくると思います。


子どもをめぐる課題#こどもをまもる)」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。 子どもの安全や、子どもを育てる環境の諸問題のために、私たちができることは何か。対策や解説などの情報を発信しています。


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