見解ドイツの「市民金」は、シュレーダー政権期の労働市場改革(「ハーツⅣ」)の修正という側面がある。記事執筆者は、要はドイツの福祉国家は寛大過ぎて納税者負担が大きすぎるという日本の生活保護バッシングをドイツを対象に展開しているわけだが、他方で市民金は就労努力をすることを前提としているし(就職活動をしない場合は段階的に減額される)、市民金はドイツ基本法では第Ⅰ条のみならず、第20条(生命と自由の保障)に基づくもので、社会権をも考慮したものであるということを忘れてはならない。 世界に先駆け作られたビスマルク型福祉国家は国民統合のためだった。政治学者アンセルは社会保障は自分が受益者でない限り批判されるのが常だという。外国人であればなおさら批判しやすいかもしれない。自助努力や自己責任は否定されるべきではない。ではそれらを果たせない人、果たしたくない人ならば、野垂れ死んで良いという話にもならないはずだ。
コメンテータープロフィール
専門は比較政治、欧州政治。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。日本貿易振興機構(JETRO)パリ・センター、パリ政治学院招聘教授、ニューヨーク大学客員研究員、北海道大学法学研究科教授等を得て現職。フランス国立社会科学高等研究院リサーチ・アソシエイト、シノドス国際社会動向研究所理事。著書に『アフター・リベラル』(講談社現代新書)、『ポピュリズムを考える』(ちくま新書)、『感情の政治学』(講談社メチエ)『ミッテラン社会党の転換』(法政大学出版局)、編著に『ヨーロッパ統合とフランス』(法律文化社)、『現代政治のリーダーシップ』(岩波書店) など。
吉田徹の最近のコメント
「死ぬ権利」フランスで議論が進んでいる背景
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