解説ドイツを襲う景気後退が予算案策定で軋む連立政権を崩壊させた。ショルツ首相のSPDは財政支出、緑の党は環境対策で予算増、対するFDPは財政規律派で、果ては減税まで主張する始末。FDPは党勢後退で尖った主張をせざるを得なかったという背景もある。信任案が通れば選挙は避けられるが、見通しは厳しい。 トランプ再登板を前にEUは対策を立てなければならない。そのためには独仏が要になるが、フランスのマクロンもレームダックで、ドイツも政治的空白を抱えることになるから、いかにもタイミングが悪い。 連立政権が常に不安定とは限らないが、FDPの政権離脱は60年代にも二回あり、一回はメンバーを変えて復帰、二回目はCDU/CSUとSPDの大連立を帰結させた。今回もそのような結果になるかわからないが、事態は今だ流動的なままだ。
コメンテータープロフィール
専門は比較政治、欧州政治。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。日本貿易振興機構(JETRO)パリ・センター、パリ政治学院招聘教授、ニューヨーク大学客員研究員、北海道大学法学研究科教授等を得て現職。フランス国立社会科学高等研究院リサーチ・アソシエイト、シノドス国際社会動向研究所理事。著書に『アフター・リベラル』(講談社現代新書)、『ポピュリズムを考える』(ちくま新書)、『感情の政治学』(講談社メチエ)『ミッテラン社会党の転換』(法政大学出版局)、編著に『ヨーロッパ統合とフランス』(法律文化社)、『現代政治のリーダーシップ』(岩波書店) など。