解説世界の海運は大混乱に陥っている。2023年以降、イエメンの武装組織フーシ派が、イスラエルと戦闘状態にあるハマスを支持し、イスラエルに関係する船舶であることを理由に紅海を航行する船舶を繰り返し弾道ミサイルなどで攻撃している。世界の海運会社の多くは、リスクを回避し、紅海と地中海を結ぶスエズ運河を避け、アフリカ大陸南方の喜望峰沖を通過するようになっている。迂回航路は、時間も燃料代も多くかかり、船賃の高騰をもたらした。 また、中米を横断するパナマ運河はエルニーニョ現象による干ばつにより運河を起動する源となるガトゥン湖の水が大幅に減少し、通航船舶数を減少させなければならなかった。エルニーニョ現象も収束し、2024年からは通航枠を徐々に増やしてきたが、海運会社からの信頼の回復が遅れ、通航数は完全には回復していない。 世界の海運は戦乱と気候変動の影響を受け、機能回復にはまだ時間を要するようだ。
コメンテータープロフィール
東海大学海洋学部教授。1962年千葉県出身。学習院大学経済学部卒後、金融機関を経て日本船舶振興会(現日本財団)に勤務。勤務の傍ら埼玉大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。2009年東海大学教授。海難審判庁業務改善委員会委員、国土交通省海洋政策懇談会委員、東京都専門委員などを歴任。八重山自然大使。海洋コメンテータとして各種メディアで海洋問題を解説。著書、日本の国境(新潮新書)ほか多数。
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