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辻本典央

辻本典央

認証済み

近畿大学法学部教授

報告

解説名誉毀損罪は、公然と事実を摘示して、被害者の名誉を毀損する行為を処罰するものです。 ここで名誉とは、被害者の名誉感情と理解する見解もあり、本人にのみ事実を示す場合も、それによって名誉感情が害されることから、名誉毀損に当たりうる、とする考え方もあります。しかし、判例や通説は、名誉とは社会的評価であると理解しており、公然と虚偽の事実が示されることで、初めてその評価も害される、と理解しています。 このような理解から、公然とは、不特定又は多数に対するものであることが必要であり、特定かつ少数の者に対するものでは足りないことになります。本件も、中傷メールが不特定多数の目に触れる状態であれば、名誉毀損罪に該当するのですが、その審理が不十分だというわけです。 なお、メール等で少数に対する表現であっても、そこから他の不特定多数の人に広められる可能性があれば公然の要件に当たるとする考え方もあります。

コメンテータープロフィール

旅行会社勤務を経て29歳で立命館大学に入学し、3年生の時に司法試験に合格。卒業後は京都大学大学院法学研究科に進み、刑事法を専攻。2005年に近畿大学法学部専任講師となり、現在は教授。2011年から2012年にかけて、ドイツ・アウクスブルク大学客員教授を務める。専門は刑事法全般(特に刑事訴訟法)。著書は、『刑事訴訟法』、『刑事手続における審判対象』、『刑事弁護の理論』(全て単著)。法学博士。趣味は洋画鑑賞、水泳、見る将(大山・中原時代からの筋金入り)。

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