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園田寿

園田寿

認証済み

甲南大学名誉教授、弁護士

報告

本件の擬律(ぎりつ=条文のあてはめ)は複雑です。被害者としては相手が医師だと思ったからこそ殺害を依頼した可能性があり、記事にあるように医師免許の不正取得がもしも事実だとすると、そこに重大な錯誤があるので被害者の嘱託は無効になる可能性があります。つまり、罪名は嘱託殺人罪ではなく通常の殺人罪に変わります(心中するとだまして相手が先にみずから毒を飲んで死んだ場合を、自殺ほう助罪ではなく殺人罪にした判例があります)。したがって問題は、「安楽死」だということでその医師の殺人罪の違法性がなくなり適法だとされるのか、ということになりますが、それは過去のケースから判断してもありえません。 その医師が嘱託は法的に有効だと思っていたならどうかですが、事実に対する法的評価や判断を誤っても(「殺す」という事実は認識しているのだから)故意は否定されないという条文(刑法38条3項)があり、やはり殺人罪になります。

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コメンテータープロフィール

園田寿

甲南大学名誉教授、弁護士

1952年生まれ。甲南大学名誉教授、弁護士、元甲南大学法科大学院教授、元関西大学法学部教授。専門は刑事法。ネットワーク犯罪、児童ポルノ規制、薬物規制などを研究。主著に『情報社会と刑法』(2011年成文堂、単著)、『改正児童ポルノ禁止法を考える』(2014年日本評論社、共編著)、『エロスと「わいせつ」のあいだ』(2016年朝日新書、共著)など。Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。趣味は、囲碁とジャズ。(note → https://note.com/sonodahisashi) 【座右の銘】法学は、物言わぬテミス(正義の女神)に言葉を与ふる作業なり。

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