解説動機の解明はこれからだが、容疑者が昨年自費出版した『ウクライナの勝利不可能な戦争 (Ukraine's Unwinnable War)』という本や、ウクライナの国旗の色に染められたプロフィール写真のFBアカウントにも注目が集まっている。『ウクライナの勝利不可能な戦争』で容疑者は「罪のない隣人がプーチンのようなテロリストに殺されているときに、どうして何も行動を起こさずにいられるだろうか」「世界にとってウクライナが勝つことは不可欠」といった主張を展開し、ロシア崩壊の手段として、プーチンの暗殺を示唆している。Xに繰り返し投稿された熱狂的なウクライナ支持や、ウクライナで戦う義勇兵の募集活動などから、ウクライナ支援に難色を示していたトランプへの不満から犯行に及んだのではないかとの見立ても強まっているが、政治的にヒートアップしやすい時期だけに慎重な動機解明が待たれる。
コメンテータープロフィール
アメリカ政治・外交、国際関係論、平和研究。東京大学教養学部卒、同大大学院総合文化研究科で博士号取得（学術）。日本学術振興会特別研究員、早稲田大学助手、米国ハーバード大学、ジョンズホプキンズ大学研究員、関西外国語大学助教、高崎経済大学経済学部国際学科准教授を経て2022年より現職。著書に『戦争違法化運動の時代－「危機の20年」のアメリカ国際関係思想』（名古屋大学出版会、2014年）共訳・解説に『リベラリズムー失われた歴史と現在』（ヘレナ・ローゼンブラット著、青土社）。
