Yahoo!ニュース

松本俊彦

松本俊彦認証済み

認証済み

精神科医

報告

意外に誤解されているが、薬物の勧めを断ることは、いわれているほど簡単ではない。というのも、最初に薬物を勧めてくれる人は、決していかにも「薬物をやっています」といった感じの人ではないからだ。それどころか、その反対のことが多い。たとえば、自分が「こんな風になりたい。何とかお近づきになりたい」と憧れている人であったり、孤立無援で誰にも心を許せない状況のなかで唯一なんでも話せる、信頼できる人であったり、あるいは、とても大好きで「この人との関係を失いたくない」と感じている相手だったり、さらには、生まれて初めて「自分を必要としてくれた、自分の価値を認めてくれた」相手だったりする。その意味で、問題とすべきは、薬物の勧めを受け容れたことではない。むしろ、それまでその人がいかに孤立し、自分の価値に疑いを持っていたのか、ということなのだ。依存症が「孤立の病」といわれるのは、まさにそのゆえである。

こちらの記事は掲載が終了しています

参考になった6920

コメンテータープロフィール

依存症や自傷・自殺の臨床と研究を専門とする精神科医です。

松本俊彦の最近のコメント

  • 松本俊彦

    精神科医

    見解昨今の日大アメフト部報道により、学校の相談部門や支援者が「安心して弱さをさらけ出せる場所・相手」でな…続きを読む

    こちらの記事は掲載が終了しています

  • 松本俊彦

    精神科医

    補足海外の大麻寛容政策について、「薬物汚染が深刻な国における苦肉の計」とする類いの解説は、あまりに不正確…続きを読む

    こちらの記事は掲載が終了しています