解説脳死した方の体内に遺伝子を改変した豚の腎臓を移植する手術は、近年アメリカで行われるようになっています。将来、実際に腎不全の患者さんなどに移植する際の安全性などを確かめるためです。過去の研究では、体内に埋め込まれた豚の腎臓が尿を作ることや、体にとって毒となるクレアチニンを除去できることが示唆されています。 人間にとって、豚の臓器は異物ですので、本来なら免疫細胞が反応し、臓器として働くことはできません。過去の研究では、豚の腎臓と一緒に胸腺(免疫細胞を教育できる)を移植するなど、反応を抑えるための試行錯誤が行われており、今回、長期間の機能が確かめられたのは前進と言えるかもしれません。 背景には、糖尿病や先天的な病気などで腎臓が働かなくなる人が多くいるのに対し、(脳死の方からの提供などで)移植できる臓器が世界的に不足していることがあります。特に、脳死移植が少ない日本ではその不足は深刻です。
コメンテータープロフィール
(いちかわ・まもる)医療の「翻訳家」/READYFOR(株)基金開発・公共政策責任者/(社)メディカルジャーナリズム勉強会代表/広島大学医学部客員准教授。00年東京大学医学部卒業後、NHK入局。医療・福祉・健康分野をメインに世界各地で取材を行う。16年スタンフォード大学客員研究員。19年Yahoo!ニュース個人オーサーアワード特別賞。21年よりREADYFOR(株)で新型コロナ対策・社会貢献活動の支援などに関わる。主な作品としてNHKスペシャル「睡眠負債が危ない」「医療ビッグデータ」(テレビ番組)、「教養としての健康情報」(書籍)など。
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