見解最低賃金を急激に引き上げても、働く人の処遇改善にはつながらない。 まず大企業が人件費の負担増を価格転嫁することで、物価が急激に上昇する。為替レートが円安に振れれば、輸入物価の上昇を通じて物価の上昇スピードがさらに加速し、賃金の上昇ペースを上回ることで人々の実質的な購買力が落ち込むリスクが高まる。 一方、下請けなど価格転嫁が困難な中小企業では人件費負担の重さに耐えきれなくなって倒産・廃業が相次ぎ、失業者が増えることになる。 さらに配偶者のいるパートタイムやアルバイトの従業員は「年収の壁」が存在するため、時給が上がって年収が一定水準を超えると社会保険料や各種税金の負担が発生することになり、勤務時間を減らすなどの就労調整をしなければ手取り所得が減ってしまう。 このように急激な最低賃金の引き上げは、国民生活をかえって窮乏化させてしまうという、本末転倒の結果を招く可能性が高い。
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コメンテータープロフィール
1971年神奈川県生まれ。95年慶応義塾大学経済学部卒業、同年銀行系シンクタンク入社。99年日本経済研究センター出向、00年シンガポールの東南アジア研究所出向。02年から05年まで生保系シンクタンク経済調査部主任エコノミストを経て、現在はBRICs経済研究所代表。同研究所の活動とあわせて、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」など各種メディアにも出演中。また、雑誌・WEBでの連載や各種の講演も多数行なっている。『図説BRICs経済』(日本経済新聞社)、『増税なしで財政再建するたった一つの方法』(角川書店)、『オトナの経済学』(PHP研究所)、『日本の「地下経済」最新白書』(SB新書)など著作多数。
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