感染者数がすでに第3波のピークを大幅に上回っている状況で、政策当局の感染対策が「緊急事態宣言」ではなく、その一歩手前の「まん延防止等重点措置」の適用では政策の整合性がとれていない。大阪市に「まん延防止等重点措置」を適用した場合の経済損失は1か月あたり1074億円と試算されるが、大阪全域を対象とした「緊急事態宣言」に切り替えると、1か月あたりの経済損失は2150億円でほぼ2倍に膨らむ。経済損失額は大きくなるが、大阪市以外のエリアでも感染者数が増えている以上、行動制限の対象エリアを広げないと、変異株の感染拡大に歯止めをかけることは難しいだろう。また、「まん延防止等重点措置」を「緊急事態宣言」に切り替えれば、それ自体人々の危機意識を高める効果が期待できるので感染抑止力は強まる。早い段階で「緊急事態宣言」に切り替えたほうが、感染対策の費用対効果は大きいといえるのではないか。
コメンテータープロフィール
1971年神奈川県生まれ。95年慶応義塾大学経済学部卒業、同年銀行系シンクタンク入社。99年日本経済研究センター出向、00年シンガポールの東南アジア研究所出向。02年から05年まで生保系シンクタンク経済調査部主任エコノミストを経て、現在はBRICs経済研究所代表。同研究所の活動とあわせて、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」など各種メディアにも出演中。また、雑誌・WEBでの連載や各種の講演も多数行なっている。『図説BRICs経済』(日本経済新聞社)、『増税なしで財政再建するたった一つの方法』(角川書店)、『オトナの経済学』(PHP研究所)、『日本の「地下経済」最新白書』(SB新書)など著作多数。
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