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星周一郎

星周一郎

認証済み

東京都立大学法学部教授

報告

見解事件発生直後は、第一通報者であり被害者でもある男性が犯人と疑われ、警察による、厳しい取調べを伴う捜査の対象となったほか、男性が言ってもいない台詞を言っていた、といった誤報も含め、男性を犯人視する報道が相次ぐなど、犯罪捜査や報道のあり方(メディア・スクラムの問題性)について大きな教訓を残す事件にもなりました。 当時は、前代未聞の事件だったこともあり、憶測が飛び交うことにもやむを得ない面はあったのかもしれません。もっとも、そうであるからこそ、客観的な証拠に基づく冷静な捜査や報道が望まれるところです。 事件から3週間後にオウム関連会社にたどり着いたのは、適切な捜査が並行して行われていたことを意味しています。しかし、「信教の自由」の関係もあり、宗教関係者への捜査には「慎重さ」が求められる雰囲気のなか、結果的に、地下鉄サリン事件の未然防止につなげることができなかったのは、残念の一言につきます。

コメンテータープロフィール

1969年愛知県生まれ。東京都立大学法学部卒業、博士(法学・東京都立大学)。専門は刑事法。近年は情報法や医事法にも研究対象を拡げている。著書として『放火罪の理論』(東京大学出版会・2004年)、『防犯カメラと刑事手続』(弘文堂・2012年)、『現代社会と実質的刑事法論』(成文堂・2023年)、『アメリカ刑法』(訳・レクシスネクシス・ジャパン・2008年)など。

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