この番組に出演した郷原です。番組では言い足りなかった点について若干補足して解説します。重大事故の遺族の方々による「組織罰を実現する会」が求めている「組織罰」というのは、多くの法律に設けられている「両罰規定」を、重大事故についての業務上過失致死傷罪にも適用する「特別法」を創設して、法人組織の処罰を可能にしようというものです。それにより、直接の当事者の過失行為者(運転手、船長など)が死亡していても、その人に同罪が成立することを立証できれば、原則として企業に罰金刑が科されることになります。罰金額の上限も企業の経営規模に応じたものにします。しかし、企業側が、当該事故の原因となった過失行為に対して、十分な防止対策を講じていた場合は免責されます。それは、企業側が立証責任を負います。このような法律を制定することで、重大事故の処罰を、従来の「個人中心」から「組織中心」に変えていこうとするものです。
コメンテータープロフィール
1955年、島根県生まれ。東京大学理学部卒。東京地検特捜部、長崎地検次席検事、法務省法務総合研究所総括研究官などを経て、2006年に弁護士登録。08年、郷原総合コンプライアンス法律事務所開設。これまで、名城大学教授、関西大学客員教授、総務省顧問、日本郵政ガバナンス検証委員会委員長、総務省年金業務監視委員会委員長などを歴任。著書に『歪んだ法に壊される日本』(KADOKAWA)『単純化という病』(朝日新書)『告発の正義』『検察の正義』(ちくま新書)、『「法令遵守」が日本を滅ぼす』(新潮新書)、『思考停止社会─「遵守」に蝕まれる日本』(講談社現代新書)など多数。
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