見解声優の実演じたいには著作権はありませんが、著作隣接権では守られています。ただし、現行法には30条の4という規定があり、AI学習などの情報解析のための複製は許される。もっともこれにも制約があって、例えば「実演家の利益を不当に害するような」AI学習のための複製は、許されません。また、AIを駆使した声質や声の特徴の模倣は著作権などの侵害にはあたりにくい一方、販売など営利目的で著名人の声を利用すれば、パブリシティ権の侵害や不正競争防止法の違反に該当する可能性はあります。 この辺りは内閣府が今年取りまとめた「中間まとめ」に詳しいところですが、声の保護はディープフェイクの問題とも関連してまだまだ議論が必要な領域ですね。米国でもAIによる学習の是非はまだ裁判の最中で帰趨が読めない中、ハリウッドの俳優などは昨年の大規模ストライキを通じて、AI活用には本人の「同意と支払」を要する旨合意したと宣言しています。
コメンテータープロフィール
弁護士(日本及びニューヨーク)。骨董通り法律事務所 for the Arts 代表。日大芸術学部・神戸大学大学院・iU・CATで客員教授。専門はエンタテインメント・メディアの法律と契約、著作権法、肖像権・メタバースなど情報法。 内閣府知財本部・文化庁ほか委員。デジタルアーカイブ学会法制度部会長、JPASN常任理事、エンタメロイヤーズネットワーク理事。近著『18歳の著作権入門』(ちくま新書)、『エンタテインメント法実務』(弘文堂・編著)、『ロボット・AIと法』(有斐閣・共著)ほか。
関連リンク(外部サイト)