DNA鑑定だけでなく、旧証拠と取り調べ録音テープなどの新証拠を総合的に見れば、袴田さん有罪の判断はありえないと思っていただけに、極めて意外な決定だ。再審開始は、新旧の証拠を総合的に判断し「確定判決における事実認定に合理的な疑いを生ぜしめれば足りる」とした、最高裁・白鳥決定はどこに行ったのか。 再審は取り消すのに、死刑と拘置の執行停止はそのままというのは、まったく整合性がない。東京高裁は、自分たちの手で袴田さんを死刑台に連れていく自信はなかったのだろう。 やはり死刑囚が再審を求めていた名張毒ぶどう酒事件では、第7次請求で名古屋高裁刑事1部(小出錞一裁判長)が再審開始を決めたのに、同高裁刑事2部(門野博裁判長)がそれを取り消し、結局、請求人は獄中で死亡した。 袴田事件についても、最高裁で時間をかけて審理する間に、当人が死亡し、手続きが終了すればよいという、裁判所の願望が透けて見える。
コメンテータープロフィール
神奈川新聞記者を経てフリーランス。司法、政治、災害、教育、カルト、音楽など関心分野は様々です。2020年4月から神奈川大学国際日本学部の特任教授を務め、カルト問題やメディア論を教えています。
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