「個人」の発信の価値を高めるーーヤフーが“クリエイター”のプラットフォームを作るまで
ヤフーは10月30日、新たなプラットフォーム「Yahoo! JAPAN クリエイターズプログラム」(以下、クリエイターズプログラム)を開設しました。各分野で活躍するクリエイターが、自身の作品や動画コンテンツを投稿するプラットフォームです。
著名クリエイターやインフルエンサーのオリジナル動画コンテンツをYahoo! JAPAN上に掲載
個人が発信する情報も、「ニュース」である
Yahoo!ニュースの中で、各分野の専門家や有識者による、取材やオピニオンなどを軸とした記事が集まる「Yahoo!ニュース 個人」。Yahoo!ニュースのカテゴリーのひとつとして、2012年に始まりました。執筆する専門家・有識者は「オーサー」と呼ばれ、現在600人超が登録されています。(詳しくは500人の専門家の発見と言論が社会を動かす――「Yahoo!ニュース 個人」5年間の軌跡)
FacebookやTwitterが日本に上陸したのは2008年のこと。インターネットは世間に浸透し、ブログやSNSで誰しもが情報発信を行うようになっていました。それまで媒体社から記事をお預かりし、配信し続けてきたYahoo!ニュースの担当者も、「個人が発信する情報も、ひとつのニュースである」と考えていました。そして生まれたのが、「Yahoo!ニュースで個人が情報発信する舞台」――Yahoo!ニュース 個人でした。
「2012年にリリースした当時のYahoo!ニュース 個人は、『ヤフーのメディアパワー』を推していました。専門家のみなさんには、ブログやSNSで数値が伸びにくい分、『ヤフーという大通りの商店街にお店を構えませんか』とお誘いしていました」
リリース当時を振り返るのは、Yahoo!ニュース 個人責任者の中村塁。しかし、数年かけてサービスの立ち位置や考え方が変わったといいます。
「オーサーがYahoo!ニュース 個人で情報発信をすることで、別媒体での仕事が決まったり、新たな書籍を出したり、『オンライン・オフライン問わず、新しいコンテンツが生まれる』サイクルが生まれました。Yahoo!ニュース 個人は、日本のメディア業界全体に貢献していけると思っています」
Yahoo!ニュース 個人は、執筆から公開までのすべての権限をオーサーに渡しています。「執筆責任はオーサー、掲載責任はヤフー」という考え方で運用されており、ニュースとしてユーザーに届けるために気をつけないといけない点は約款・ガイドラインで浸透させ、今日に至りました。
「Yahoo!ニュース 個人は、Yahoo!ニュースの配信モデルより、単純に工数もコストも高くかかります。すべての記事を読んで確認し、オーサーとのコミュニケーションも頻繁に行われていますから。――それでも、世の中に存在しなかった情報やコンテンツが生まれてくる、価値のある事業です。“大通りの商店街にお店を構えられる”ではなく、“オーサーが活躍する舞台”としても大きく成長していけるように、コミュニケーションを大切にしています」
オーサーの情報発信が、社会を変えるきっかけになった例も少なくありません。
名古屋大学大学院教育発達科学研究科の准教授である内田良さんは、組体操の問題や、部活動の教育負担など、さまざまな学校現場の課題を発信し続けました。結果、さまざまな世論を呼び、組体操を禁止する教育委員会が続出しました。
【緊急提言】組体操は、やめたほうがよい。子どものためにも、そして先生のためにも。▽組体操リスク(1)
オーサーカンファレンス2015での表彰式の様子(左:内田良氏、右:ヤフー前社長・宮坂学)
また、スポーツフォトジャーナリストの三尾圭さんは、2018年に大きな話題となった日大アメフト部によるラフプレーについて、とても早い段階で問題提起する記事を執筆しました。「アメフトへの深い知識があったからこそ、問題点をすばやく指摘いただけた」と中村は振り返ります。
「個人の情報発信は、社会をも動かす」。2018年現在は当たり前に思えるこの事実を、Yahoo!ニュース 個人は、6年かけて目の当たりにしてきました。今や個人が持つ強いパワーは、さまざまな領域で発揮されています。
クリエイターズプログラムは、“メディアプラットフォーム”
Yahoo!ニュース 個人で培った“支援”のノウハウを展開し、「Yahoo! JAPAN クリエイターズプログラム」は誕生しました。サービスマネージャーの藤原光昭は、構想の時期から「方向性がブレることはなかった」といいます。
「経営層とともに新しいメディア戦略を企てるとき、“個人”というキーワードはずっとありました。いま、インターネットユーザーの半数近くがYouTubeやFacebook、Instagram、Twitterなどに利用時間をあてています。つまり、“個人の情報発信”を求めている人がとても多いということ。しかし、ヤフーで個人が発信者となるプラットフォームを作るというのは見えていたものの、どういう形がいいかは完全に手探りな状態でした。『あの人を呼びたい』『この人にコンテンツを作って欲しい』…と夢は語っていて。戦略を考えながらさまざまな部署と連携し、いまの形に至りました」
クリエイターズプログラムは現在、動画が投稿されるプラットフォーム。投稿されたコンテンツはYahoo! JAPANのアプリやWebブラウザに掲出されています。そして、Yahoo!ニュース 個人と同じく、執筆から公開までのほとんどの権限を、クリエイターに渡しています。
クリエイターと伴走してコンテンツを作り続けるのは、簡単ではないーー。Yahoo!ニュース 個人の経験から、多くの社員が理解していることでした。
“個人の活動を支援する”という文脈で動画投稿を促すのであれば、個人が作って投稿したYouTubeの動画をエンベッドして、再生回数に応じてインセンティブをヤフーからもお支払いしたほうが早いのかもしれません。しかし、藤原は「考え方や仕組みが違う」といいます。
「クリエイターズプログラムは、“メディアプラットフォーム”です。メディアが意志を持って何かを伝えているように、僕らも『ユーザーにこういう思いになってほしい』という意志の元に、サービスを設計しています。そして、クリエイターに意志を共有して、投稿のためのほとんどの権限をお渡しし、コンテンツを社会に届けている。メディアとプラットフォームの両面を持つ、ハイブリッドな場でありたいと考えています」
サービス名に込めた、“プログラム”の未来
クリエイターズプログラムは、単体で収益をあげるサービスではありません。ヤフー全体におけるメディア戦略の一部であり、ヤフーがインターネットで課題解決をするための鍵のひとつです。
良質な個人の情報発信はいま、多くのユーザーに求められているもの。しかし、継続して発信されるには、さまざまなサポートや支援が必要です。
「クリエイターズプログラムは、名称の通り“プログラム”なので、『クリエイター支援』を軸にどんどん展開していきます。ヤフーを舞台に新たな仕事を得たり、評価されたりして、クリエイターに活躍してほしい。現状はオンライン上のプラットフォームですが、インセンティブプランの充実やオフラインの場の活用などで、良質なコンテンツを作りやすい環境を目指していきます」
サービスロゴ。上部のデザインは「緑から銀、銀から金とクリエイターが成長・成熟していく過程」を表す
世の中に存在しなかった情報やコンテンツが生まれてくるのであれば、価値のある事業――。Yahoo!ニュース 個人がたどり着いた価値観を拡大し、ヤフーは個人の支援を拡大していきます。
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